「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。

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老いた親のわがままばかり言う

「イヤイヤばかりじゃダメでしょ」。「イヤイヤ期」の子どもをたしなめる親の言葉にも聞こえます。しかし、年老いてくると「あれもイヤだ」「これもイヤだ」と駄々をこねて「幼稚化」する人も少なくありません。その理由は、歳を重ねるごとに怒りの感情を制御する前頭葉の働きが衰えていくからです。

「年寄りは怒りっぽい」というのは、俗説や嫌みではなく、まぎれもなく「脳の働きの衰え」によるものです。ですから、怒る親を見て「論理に基づき、自分の意見を述べなさい」というメッセージを伝えるのは賢明ではありません。

 こんなときは「(イヤなのだと)教えてくれてありがとう!」と伝えましょう。「イヤだ」というメッセージであったとしても、親は自分の意思を教えてくれているのですから、先に感謝の気持ちを伝えるのがいいでしょう。あなたの感謝の気持ちが伝われば、親は「え? ありがとうだって?」と我に返ります。また「子どもが譲歩してくれた」とも感じます。

 大事なのは、まずは親を肯定することです。それだけで、親は子どもの意見を受け入れる余裕が生まれてきます。まどろっこしく感じるかもしれませんが「親との会話の手順」として覚えておくとスムーズに物事が解決するはずです。