「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。

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高齢の親の後悔を軽減させたい

「元気なうちに、なにか話しておきたいことはある?」。親との限りある時間を慈しみ、大事に思うからこそ出てくる言葉です。

 白髪が増え、背中が丸まり、身体が小さくなっていく親の様子をみていると「今のうちに、大事なことを聞いておかなくちゃ」という気持ちになるものです。

 私は「訪問リハビリ」を生業としていますが、終末期を迎える患者さんには「誰かに話したいけれど、言えないことを抱えている」といった方が、少なくありません。

 もう本当に、あらゆるものがありました。浮気、負債、隠し子、裏切り……。山あり谷ありの人生のなかで、程度の差こそあれ、誰だって1つや2つは「なかなか話せない秘密」があるのだと思います。

 そして、自分だけが抱えている思いを吐き出せずに苦しんでいる人が、とても多いことも知りました。ただそれは、本人以外は気にならないことばかりです。だからこそ、秘密を吐き出してもらうのが、終末期を迎える親に対する「親孝行」の1つです。ただし、いきなり「話しておきたいことはある?」と聞いても、親は戸惑うでしょう。

 おすすめは、子どもが先に「自己開示」をすることです。たとえば、「ずっと誰にも言えなかったことなんだけど、聞いてもらっていい?」などです。

「秘密を共有する仲間」になれば、秘めた想いを打ち明けてくれるかもしれません。