「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。

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「まずはやってみよう」の言葉では親は動かない

「まずはやってみようよ。それでダメなら、そのとき考えようよ」。健康のための散歩やリハビリなどをイヤがる親に対しての言葉です。「失敗したっていいじゃない」と、前向きなメッセージで、悪くないように感じます。私自身も親に対して、しょっちゅう思うことです。

 しかし、実はこの声かけ、高齢の親には驚くほど通じません。なぜならば、親は失敗をしたくないし、新たなチャレンジをする「必要性」を感じていないからです。

 日々、目が見えにくくなったり、耳が聞こえづらくなったり、歩きづらくなったり、ほぼ不可逆的に「喪失体験」をし続けるのが高齢者です。老化とは日々の喪失体験だと理解してください。一度へこんでしまうと「また取り返せるだろう」とは思えないのです。

 こんなときは「絶対、大丈夫! 私がついているから!」と、言い切ってください。根拠はいりません。根拠なく言うのは気が引けるかもしれませんが、力強く背中を押すことで親は「そうかな。じゃあ、やってみようかな」と思えます。

 あとは、親が失敗しないように、あなたが先回りして準備をしておけばパーフェクトです。