兵庫県の斎藤元彦前知事がパワハラ疑惑などで告発されたニュースが世間を騒がせた。パワハラや権力の乱用が行われ続けると、組織はどうなってしまうのか、経営学の視点から考えてみよう。(やさしいビジネススクール学長 中川功一)
パワハラの悪影響を受けるのは
当事者だけではない
パワハラ疑惑が取り沙汰され、兵庫県の斎藤元彦知事が失職した。そんな中、今年9月、国内経営学のトップ誌『組織科学』では、興味深い論文が発表された。
その論文のタイトルは、「非生産的行動の悪影響は目撃者にも及ぶ」(能渡真澄・伊達洋駆氏による論稿)。著者らはパワハラやサボり、不適切行動など、つまり「非生産的行動」が組織内で発生すると、当事者間のみならず、周辺にまで悪影響が及ぶことを明らかにしている。
今回は、上記の研究に加えて既存研究の成果も踏まえ、なぜパワハラなどの非生産的行動が組織を破壊してしまうのかを解説していくことにしよう。
どんなに優秀なリーダーでも
パワハラが「一発アウト」なワケ
能渡氏らの論文では、国内企業在職者から集めたデータを基に、非生産的行動を目撃することがどのような影響をもたらすのかを分析している。主な部分を抜粋したものが、以下である。