正の期待を示すことで、モチベーションは格段にアップする

 このように、私たちには正の期待にも負の期待にも応える習性がある。このことは忘れないようにしたい。

 やる気のない従業員に対して、うっかり負の期待を示していることがないかどうか、振り返ってみる必要があるだろう。もし、負の期待を示していることに気づいたら、今後はうっかり負の期待を示さないように気をつけることである。「どうせやる気ないと思われてるんだ」と感じると、ますますやる気を失っていくものである。

書影榎本博明『ビジネス心理学大全』(日経ビジネス人文庫)榎本博明『ビジネス心理学大全』(日経ビジネス人文庫)

 さらには正の期待を持つことが大切である。ピグマリオン効果の実験でも、「この生徒はきっと伸びるはず」と教師が思っていると、日頃のちょっとしたやりとりを通してその期待が生徒に伝わり、生徒のモチベーションが高まったという心理メカニズムが解明されている。職場でも、「この従業員は、きっとやる気をもって取り組んでくれるはず」と期待していれば、そうした思いが言葉の端々に、また表情や態度に現れ、従業員も期待を肌で感じ取り、やる気を燃やしてくれるはずである。

 他者に左右されずに自分中心に生きる欧米人と違って、人との間柄を重視して生きる私たち日本人は、相手の期待を裏切りたくないという思いに強く動かされるところがある。ゆえに、期待することは、日本におけるモチベーションアップにはとくに効果的と言える。ぜひ日頃の自分の正・負の期待を振り返ってみて、極力、正の期待を示すような言葉を掛けるよう心がけたいものである。