負債10億円以上の
超大型倒産が相次ぐ

 歯科医院は同じ医療機関である病院や診療所と比べて施設や事業規模が小さいことから、その分借入金も少なく、倒産時の負債は大半が数千万円程度だ。

 実際、2000年1月から2024年9月の約25年間に発生した歯科医院経営事業者の倒産(307件)を分析すると、負債1億円未満が199件(構成比64.8%)を占めた一方、負債5億円以上は13件。そのうち10億円以上はわずか6件だった。

 つまり、負債が5億円を超えると「大型倒産」、10億円を超えると「超大型倒産」と言える業界なのだ。

 そうしたなか、2024年は9月までに高橋デンタルオフィス(千葉、破産、負債19億円)と医療法人社団綺整会(東京、破産、負債11億6000万円)の超大型倒産が2件も発生した。

 高橋デンタルオフィスは、2002年8月に個人創業。インプラント治療と矯正を専門に手がけて2019年12月期には年収入高約1億7000万円を上げていたが、近年は新型コロナの影響で受診者が減少。そうしたなか、治療が進まないとして患者が前払い治療費の返還を求める訴訟に発展していたほか、治療費とは別に患者に投資や融資話を持ちかけ、この返還を求める訴訟を起こされるなど、信用が低下。2023年12月末までに実質的な診療を停止し、今年1月31日に自己破産を申請した。

 医療法人社団綺整会は、 2012年2月に設立。横浜・新宿・名古屋・大阪に歯科医院を展開し、キレイライン矯正と呼ばれるマウスピースを使用した歯列矯正を主力に手がけ、2021年2月期には年収入高約27億7300万円を計上していた。しかし、2023年9月にグループ中核法人の医療法人社団友伸會(東京都豊島区、負債37億円)が民事再生法の適用を申請したことで、事業環境が大幅に悪化。運営する歯科医院を閉院し、2024年3月15日に自己破産を申請。同じく歯科医院を経営する関連法人4社も同様の措置となった。

 なお、高橋デンタルオフィスの負債19億円は、病院経営事業者、クリニック経営事業者を含む2024年の医療機関の倒産の中で最大となっている。