広告企業である電通のコンサル事業が、コンサル業界の中でも存在感を増してきた。すでに1300人ものコンサル人材を抱え、電通グループ内でも主力事業の一つとして急成長している。連載『コンサル大解剖』の本稿では、あまり知られていない電通のコンサル事業の全貌を、事業責任者であるdentsu Japan・豊田 祐一BXプレジデントに聞く。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
電通のコンサル人材は1300人
グループ7社でコンサルを展開
――電通グループはコンサル事業を、どのような体制で提供しているのでしょうか。
dentsu Japan(電通グループの日本事業を担う約150社の総称)グループで電通を含む7社、13組織でコンサル事業を展開しています。事業セグメントでDX(デジタルトランスフォーメーション)とBX(ビジネストランスフォーメーション)という呼称ですが、7月時点ではDXで約900人、BXでは約400人、計約1300人のコンサルタントを擁しています。
電通は全体のプロデュース機能や、戦略企画、開発から実装運用までを担当します。そして「データとクリエイティビティを掛け合わせる」という我々のモデルの全体のプロデュースを行います。
グループ会社では電通コンサルティングが戦略コンサルとその実行、計画策定支援を行っています。電通デジタルはデジタルテクノロジーとクリエイター機能を掛け合わせたサービスを提供し、電通総研(電通国際情報サービスから2024年1月に社名変更)はSI(システムインテグレーション)機能、コンサル機能、シンクタンク機能を持っています。
さらに、コンサル専業企業で新規事業創出、DXに強みを持ち、ファンド機能を有するのがイグニション・ポイント。そして、デジタルプロダクトやWebサービスの開発、UIUX(ユーザーインターフェイス・ユーザーエクスペリエンス)のデザイン制作など、比較的制作現場に近い分野でのコンサル機能を有するGNUS(ヌース)などの子会社もあります。ボストン・コンサルティンググループ元日本代表の堀紘一氏が創業した、ドリームインキュベータという戦略コンサルティング会社も持ち分法適用会社になっています。
これらが連携してコンサルティングサービスを提供していますが、これらのDX・BX領域でdentsu Japanの売上総利益全体の30%くらいを構成するまでになっています。
――すでにかなりの比率がコンサル事業になっているわけですね。そもそも、広告会社である電通でなぜ「コンサル」を展開しているのでしょうか?
広告企業である電通が行うコンサル事業の中身はあまり知られていないものの、実はコンサル業界の中でも注目が集まっている。専業コンサルファームにも負けないその強みと、そして今後の展開とは。広告事業が本業だからこそ可能になる、電通のユニークなコンサルのビジネスモデルの正体とは。次ページから詳しく見ていこう。