コンサルティング大手アクセンチュアの日本法人が今後の成長の柱に据えるのが「AI戦略」だ。顧客企業の持つ膨大な最新データをAIで解析し、コンサルティングの精度を高める最先端プロジェクトを進めている。連載『コンサル大解剖』では、AI戦略を主導するアクセンチュアの保科学世AIセンター長を直撃し、同社が進める独自戦略の具体的な中身について聞いた。また、ビッグデータ解析などを手掛けるAIベンチャー、ALBERTを異例の高額で買収した真の狙いに加え、今後のM&A方針に至るまでデジタル戦略の中枢を担う保科氏に語り尽くしてもらった。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
既に多数のデータサイエンティストを抱えるも
「まだまだ圧倒的に数が足りない」
――昨年11月にTOB(株式公開買い付け)を完了したALBERTについて、資本提携などではなく、買収した背景とは何でしょうか。
まず、現在のアクセンチュアの状況をお話しすると、人数は非公表ながら、日本で有数の規模のデータサイエンティストを既に抱えている会社といえます。うち多数が理系の修士号取得者で、私を含めて博士号取得者も多く在籍しています。ただ、まだまだ圧倒的に数が足りません。
というのも、アクセンチュアはさまざまな分野でコンサルティングを行っていますが、ほぼ全ての案件を「データドリブン」にしようとしています。具体的には、アナリティクスやAIをサービスのコアに据えるような案件のことで、社内では「アナリティクス・AI案件」と呼んでいます。
これが売り上げの何割を占めているか見ており、日本では約40%です。具体的な目標として、この数字を80%とすることを(母体となる米国主要拠点のアクセンチュアを筆頭に)グローバル方針として打ち出しています。
このところ世界では景気後退懸念が台頭していますが、そうした局面でこそデータドリブンであるべきだと考えます。実際、従来のような信頼関係だけではお客様(編集部注:クライアント企業)に選んでいただけない流れが世界では始まっているし、日本でもそうなってくると見ています。お客様の立場で考えても、不確かなものを買いたいとは思っておらず、今まで以上にデータで実証する提案を行う必要があるでしょう。
アナリティクス・AI案件の比率を80%まで上げるためには、既に大量のデータサイエンティストがいるといっても、単純計算で倍の人数が必要です。買収したALBERTの250人規模を加えても全然倍にはなりませんが、こうした背景からTOBを行い、人材の確保や育成を進めたいと考えているわけです。
次ページ以降では、ALBERTを提携などではなく、“異例”のプレミアムを付けてでも完全買収した理由に加え、AI戦略の司令塔であるAIセンターがアクセンチュア内で担う「6つの機能」と活動状況を明かしてもらう。さらに、今後の買収方針についてや、コンサルのコモディティ化が進んだことによる「戦略コンサル限界説」とデータドリブンとの“矛盾”を巡る考えに至るまで、デジタル戦略の中枢の要を担う保科氏に語り尽くしてもらった残り5000字超のインタビューを大公開する。