奇跡は自分のなかにある、だから生まれ変わりさえすれば、きっと人生の逆転劇を起こせるに違いない――。「やればできる!」と思考が変わる話題のベストセラーが日本に上陸。31歳、一度は人生をあきらめた著者が再起できたのは、古今東西の成功者たちが持つ「6つのマインド」にあった。3000冊を超える本を読み、抽出された「プラス思考」「決断力」「切実さ」「愚直さ」「謙虚さ」「根気」を武器に、一度しかない人生、「なりたい自分」になる方法を1冊に凝縮。新刊『たった一度でもすべてをかけたことがあるか』から「自分ならできる」と信じられるノウハウを紹介する。

ディスレクシア(難読症)だった彼が大学入試で満点を取れた理由Photo: Adobe Stock

遅く咲く花はあっても、咲かない花はない

 ディスレクシア(難読症)を克服して人生の逆転劇に成功した企業家、ノ・テグォンは、中卒の学歴で日雇い仕事をしながら、ふたりの息子を育てました。ところが、長男は学校生活に適応できず中退し、次男は健康上の理由でやはり中退しました。経済的にも苦しかったため、子どもを塾に行かせるどころか、面倒を見る時間もありません。結局、ふたりの息子を教えるために、父親自ら勉強をすることにしたのです。中学卒業後、ずっと工事現場で働いてきたノ・テグォンにとって、本を読むことも簡単ではありませんでした。

 文字が溶けたようになってまともに読み書きができず、文字の順序を取り違えたりします。自分がディスレクシアだということは、2009年になって初めて知りました。子どもの頃は、ただ“成績不振”とか“知的障害”と言われていたんです」

 1997年のアジア通貨危機のときには、破産も経験します。食べていくために靴磨きをしようと靴磨き台を作り、寒いソウル駅に向かいました。ところが3日間ひとりも客が来ず、食事すら取れません。もう仕事をやめようと思った瞬間、目の前の靴磨き台の上に靴が載せられました。靴の上に涙がこぼれました。涙が凍ってしまわないかと思い、あわてて拭いました。これで3日ぶりに食事が取れる。うれしさのあまり、せっせと靴を磨いていたら、お客がこう言いました。

「あなたのような働き者を見るのは初めてです」

 そのとき、彼は悟ったのです。

「その言葉を聞いた瞬間、自分のこれまでの生き方が間違っていたことを知りました。以前は本当に努力をしたことがなかった。その事実に気付いたんです。若い頃に苦労はしましたが、努力はしていませんでした。それなりに頑張って生きてきたと思っていましたが、その程度では頑張ったうちには入らなかったんです」

 靴を磨いていたときの気持ちで勉強すると、人間的にも変わりました。ハングルを覚えて本を読み、ガソリンスタンド、工事現場などで単純労働をしながら、毎日5時間から10時間はEBSの教材を読んで勉強に打ち込みました。同じ本を100回以上も読み、自分が理解した分だけ息子たちに教えました。5年間で入試問題の過去問を7回も解き、7回とも全科目で満点を取りました。子どものレベルに合わせて教材と問題のプリントを自作して教えた結果、長男はソウル大学経営学科に4年間の奨学金付きで、次男は漢陽(ハニャン)大学演劇映画学科に、それぞれ首席合格することができたのです。彼は自分の経験をもとに、「やればできる」という自信を持てと言います。

「妻から初めて字を習ったとき、妻が書いてくれた文があります。『遅く咲く花はあっても、咲かない花はない』。人生は失敗したときに終わるのではなく、あきらめたときに終わるのです。いつか花を咲かせる日を信じて、自信を持ちましょう。自信とは、自分の行動によって生まれるものです」

(本記事は、『たった一度でもすべてをかけたことがあるか』から抜粋、一部編集したものです)