カール・ケスタ―カール・ケスター教授 (C)Evgenia Eliseeva

 1つめは、ここ数年の日本経済の復活ぶりを見て、多くの教員が研究対象として日本に興味を持ちはじめていること。最近、米国では日本の政治・経済についてのニュースがよく報道されていますから、「世界経済の観点からも、地政学的な観点からも、日本の重要性が増している」と感じている教員は多いのではないでしょうか。

 2つめは、アジアの大国、中国の企業を研究するのが難しくなってきていること。かつては「中国で研修したい」という教員もいましたが、現在は、中国の企業を現地でリサーチすることそのものが困難になってきています。その分、日本への関心が高まっているのかもしれません。

 そして3つめが、「ドル高円安」です。円高の時代は、日本への旅行はお金がかかるからと躊躇(ちゅうちょ)する人もいましたが、現在はどちらかといえば割安。魅力的な為替レートが日本人気を押し上げているのは間違いありません。

ハーバードの教員たちが注目した
第一生命の成長戦略

佐藤 日本滞在中は、スタートアップ企業から大企業まで14社の企業を訪問されました。その1社が第一生命ホールディングス(以下、第一生命)です。なぜ数ある日本企業の中から第一生命を視察しようと思ったのですか。

ケスター 私たち幹事が視察先14社を選んだ際に心がけたのが、企業のサイズや業種に偏りがないようにすることです。大企業からスタートアップ企業まで、製造業からサービス業まで、万遍なく訪問企業リストに組み込むようにしました。こうした中、「大企業」と「非製造業」、両方のカテゴリーに当てはまる企業の代表として第一生命を選びました。

 第一生命に興味を持ったきっかけは、同社を研究したことのある教員から面白い会社だと推薦されたことです。