第一生命が、近年、積極的にグローバルビジネスを展開し、海外売り上げを伸ばしていること、日本の保険業界におけるコーポレート・ガバナンス改革推進のリーダー的な存在であることを知り、これは研修先としてふさわしい企業だと思いました。
また同社の稲垣精二会長が、ハーバードビジネススクールの卒業生であったことも決め手の一つとなりました。これはあとから知ったのですが、稲垣会長はハーバード在学中、私の授業を受けていたそうです。こうした理由から6月20日に、第一生命の本社(東京都千代田区)を訪問することにしました。
佐藤 教員の皆さんは第一生命のどのような点に関心を持っていましたか。
ケスター 私自身はコーポレート・ガバナンスに関する質問がたくさん出るのではないかと想定していたのですが、教員たちからは、成長戦略に関する質問がより多く出ました。これは私にとって興味深い現象でした。
特に教員たちが関心を持っていたのは、「日本の人口の少子高齢化が進む中で、どのように第一生命は成長していくのか」という本質に関わる問題でした。
第一生命の稲垣会長からは、同社のROE(自己資本利益率)を意識した経営戦略など、さまざまな成長戦略について説明をしていただきましたが、その中で特に教員たちが強い関心を示したのがグローバル戦略です。
というのも、日本の生命保険会社が、すでにアジア・パシフィック地域に進出して、これほど多くの利益を得ているとは思いもしなかったからです。現在、第一生命の利益(グループ修正利益)の約3割を海外市場からの利益が占めているそうです。これは本格的に海外進出して20年ほどの企業としては、目を見張る結果だと思います。