近藤聡・EYストラテジー・アンド・コンサルティング社長Photo by Akira Yamamoto

「プロジェクト・ドラゴン」という成長プランを掲げ、ここ数年で業績を急拡大させてきたのが、コンサルビッグ4の一角のEYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)だ。長期連載『コンサル大解剖』では、EYSCの近藤聡社長のインタビューを前編・中編・後編の3本にわたってお送りする。中編の本稿では、プロジェクト・ドラゴンに続く新たな中期計画の中身を近藤氏が激白する。コンサル業界では極めて珍しい、独自の“ある数値目標”に加えて、その目標設定の背景に存在する大きな狙いを明らかにした。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

プロジェクト・ドラゴンは達成
27年6月期までの次の中期計画は?

――2023年6月期に「プロジェクト・ドラゴン」が終了し、現在は新しい中期計画が進行中です。

 もともと、グローバルで22年から、監査とそれ以外を分離する「エベレスト」という計画が持ち上がっていたので、それに関する議論を進めていました。ですが、エベレストは昨年に完全にストップしましたし、グローバルのリーダーが7月に交代したばかりで新しい方針などもまだ出てきていませんから、ジャパンはジャパンとして、独自に27年6月期までの目標を立てました。

 おさらいすると、前回のドラゴンの目標は、国内のEYの売上高の割合を、監査業務と非監査業務で50:50にするというものでした。

 なぜかというと、非監査がそれぐらいの規模を持たないと、「監査のシェアNo.1」のファームとして監査が競合に狙われたとき、そのクライアントとの関係が全て切れてしまうからです。

 コンサルやトランザクションなど、これまで成長ができていなかった領域が成長するのも重要ですし、監査側の視点でも、非監査の部隊が強ければEYのレピュテーションや規模が守られるという利点があります。また、監査と非監査で利益率も異なりますから、ファームが健全に利益を担保するという意味でも、コンサルなどが一定の規模を持つことが重要でした。

 ドラゴンの目標は無事達成しましたが、では次にどこに目標に置こうかと考えたときに、やはり相変わらず、デロイト トーマツ コンサルティングやPwCコンサルティングのような競合に規模でキャッチアップしようとは思わないんですよね。

 われわれは、テクノロジー系についてはかなり後発ですし、GAFAやセールスフォースなどの大手IT企業の監査をしていますから、アライアンスビジネスがどうしても限定されてしまいます。

 また、SAPにせよ何にせよ、例えば、規模だけを追いかけてシステムのエグゼキューションまでやるようなSIer(システムインテグレーター)を買収しても、体力的にマネージする能力もなければケイパビリティーもない。そこが何かトラブルを起こした場合に、埋めることもできないので、デロイトやPwCなどと同じことをやると絶対に“負け戦”になります。

 だからこそ、これまでわれわれは、テクノロジーとは全く違うビジネスコンサルのポートフォリオにフォーカスし、そこで成長してきたわけです。

 なので、この方向感は全く変わらず、次の中期計画においても自分たちが差別化するための要素として位置付けています。

 それで、次の最大の目標なのですが、他社に追いつくために何かをするというよりも、グローバルのEYの中でジャパンをもっと光り輝くものにしましょう、ということなんですよね。

――グローバルの中でとは具体的にはどういうことでしょうか。

次ページでは、近藤氏が掲げる次の中期計画の中身をつまびらかにする。近藤氏は、国内だけでなくグローバルにもフォーカスし、ある数値目標を重視することにしたという。コンサル業界の中でも珍しいそのKPIとは。