医療費は保険料で全て賄われているわけではなく、公費負担が約4割を占めているのが実態だ。国家財政においては債務残高がGDPの257.2%であり、これ以上の公費負担は避けた方がよいだろう。

 そこでまず取り組むべきことは、無駄の排除だ。わが国は皆保険制度であり、誰でも必ずどこかの保険に加入(または医療扶助を受給)している。顔写真付きのマイナ保険証で加入保険者を把握すれば、紙の健康保険証で発生していた発行経費や、保険証切り替え時の無駄な事務経費が省ける。

 また、医療保険者の状況を見ると、現在では高齢者への拠出金が増え、3000以上の保険者が個別に施策を実施することの意味も薄れている。現状では法律上、診療行為でマイナンバーを使えず、マイナ保険証で表立って番号を使うことができない。しかし、マイナ保険証が普及することで、マイナンバーを基点に医療保険者を一本化すれば大幅な事務の合理化が実現する。

 もちろん、マイナ保険証の交付に際しては、外出が困難な高齢者などに対し丁寧な対応が求められる。この点を前提として当初の議論に立ち返り、医療保険の診療行為でマイナンバーが使えるよう、マイナンバーの特別法を制定すべきだ。

(行政システム顧問 蓼科情報主任研究員 榎並利博)