現地現物を怠ると、言ってみれば「海にいるエビ」の絵を描くときに、エビを赤く塗る子どものようになる可能性が高いのです。生きているエビは黒っぽい色をしていますが、火を通すと赤くなります。「海にいるエビ」の絵を赤く塗る子どもは、「調理済みのエビ」しか知らないということです。

 正確に描くには、実際に海に行って生きているエビを見るのが一番です。それが難しいのなら、鮮魚店や水族館で調理前のエビを見るのもいいでしょう。私が考える”現地現物”とは、「自分の目で見て確認し自らで感じる」ということです。

 みなさんは、日頃、情報に接するときに、はたして、そんな現地現物の意識を持っているでしょうか。「調理済みのエビ」しか見たことがない状態で、「生きているエビ」を描く、そんなことになってはいないでしょうか。世の中には自分ではアクセスできない情報もありますが、「正確性においては、現地現物で得る情報に勝る情報はない」ということを理解していると、情報の扱い方にも大きな違いが出てきます。

 取材をせずにネットで拾った情報だけでまとめた「コタツ記事」を「事実」と受け取るような愚に陥らずに済むようになる。そんなものをネットで読むよりも、はるかに有効な情報収集ができるようになるはずです。

「出かけないとわからない」ことが真実

 たとえば、とある著名者やプロアスリートのインタビュー記事を読んだとしましょう。その内容が「真の情報」とは限りません。本人がうまく言語化しきれていない場合もあるでしょうし、インタビュアーがまとめる段階で、微妙にニュアンスが変わっている可能性もあります。いわゆる編集マジックです。では、どうしたら真の情報にたどり着けるかと言ったら、一番いいのは、その本人に会って、直に話を聞くことです。

 私は、初めてご依頼いただいたクライアントの社長や役員の方にお会いする際、その方々のインタビュー記事に事前に目を通すようにしていますが、記事から受ける印象と実際にお会いしたときの印象は、たいてい違います。記事では「仕事に厳しそう」、もっと正直に言えば「怖そう」な方でも、実際にお会いしてみると、たしかに仕事には厳しいのでしょうが、コミュニケーションにおいては非常に柔和で配慮がゆき届いている、そういうケースが非常に多いのです。

 私は最初に入社したトヨタでこの現地現物を叩き込まれました。