すぐに解決できる名前のついた課題だけでなく、萌芽段階の名前をつけられない課題、つまり曖昧さを受容することが大事だ。いったん曖昧な状態を受け入れて、向き合い方を決める。その能力をネガティブ・ケイパビリティという。あなたの組織がネガティブ・ケイパビリティを身につけていくためにできることをお伝えしよう。
モヤモヤしている状態を受容する
モヤモヤを共有してもらった際、まずはすぐに解決しようとする姿勢から改めよう。
モヤモヤはその場で解決できるとは限らない。本人でもチームの仲間でも解決できないことはある。未知のテーマや難題であって、解決策がすぐにはわからないからこそモヤモヤなのだ。
拙速に行動するとかえってコトがややこしくなる。本人(たち)の意にそわない行動をとって関係性を悪くする場合もある。
・モヤモヤを受け止めてくれた
・モヤモヤしているとわかってくれた
この状態を前向きに捉えよう。まずは許容することが、モヤモヤのコントロールには欠かせないのだ。
よってモヤモヤの声を上げる人も、それがすぐに解決できる、解決してもらえると思ってはいけない。
モヤモヤにゆっくりと名前をつけていく
モヤモヤした状態を受容した後で、原因や要因をゆっくりと言語化していこう。
たとえば課題(モヤモヤ)解決のための話し合いをして、要因らしきものがいくつか見えてきたとする。そのとき、すべての要因を洗い出せていなくても、いきなり解決策が見つからなくても問題ない。
「要因がいくつか見えてきた」
「能力ではなく、仕事の進め方に問題があることがなんとなくわかってきた」
「モヤモヤに名前がついた。一歩前進です!」
このようにモヤモヤに対する理解の度合いが上がってきたり、モヤモヤの原因や要因に名前がついたりしたら、それは大きな前進だ。
解決しない選択肢も大切にする
モヤモヤに名前がつくのと、それを解決するのとは別の話だ。まずはその問題や課題との向き合い方を決める。「すぐに解決するか」「時間をかけて解決するか」、あるいは「解決しない」と割り切るか。「課題=すぐに解決」の思考にとらわれずに、対話によって柔軟に判断しよう。
もちろん、すぐ解決したいものは即対応すればよい。または「各自要因をじっくり考えてみて、次回のミーティングで詳細を議論しましょう」でもよい。「どうにもならないから取り下げる(向き合わない)」と判断するのもありだ。
向き合うと決めたものは、流さない
モヤモヤをなんとなく流さない。モヤモヤの言語化は大事だが、言語化された状態で放置されると当事者のモヤモヤは増幅されるだけだ。やがて組織に対する無力感しか生まれなくなる。
「チーム共通のタスクリストに登録し、やり忘れ、検討し忘れがないように毎週のミーティングでリマインドしよう」
このように、向き合うと決めたら、向き合い続ける姿勢が大切だ。すぐ解決しなくてもよい、ただしきちんと向き合おう。
ちなみに、問題や課題を気合・根性・脊髄反射ですぐその場で解決しようとするのではなく、向き合い方を決めて取り組むことを何というか? マネジメントと言う。あなたの組織はマネジメントができているだろうか。
・共有されたモヤモヤをすぐに解決しようとしない
・解決しない選択肢も含めて、モヤモヤとの向き合い方を柔軟に判断する
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。