果たしてどちらのシナリオがより多くの貯蓄につながるだろうか?
多くの人はここで後者のシナリオを選ぶ。同時に複数の目標を掲げた包括的なアプローチのほうが効果的だと考えるからだろう。つまり、お金が必要な理由が多ければ多いほど、お金を取っておこうというモチベーションにつながるはず、という考え方だ。
これは必ずしもまちがいとはいえない。実際、被験者は複数の目標を設定することによって、目標をまったく設定しなかったときより50%も多くお金を貯めることができた。
これに対し、前者のシナリオ、すなわち、目標をひとつに絞った場合の貯蓄額はこれをはるかに上回った――実に、2倍を超える貯蓄額となったのだ。
問題は目標が「ない」ことではなく
目標が「多すぎる」ことにあった
行動洞察チームとも交流のある行動経済学者ディリップ・ソマンと同僚のミン・ザオによるこの研究は、一見常識では考えにくいロジックを見事に実証してみせた。