複数の目標を同時に掲げると、そのなかのどれがどのくらい重要かを常に意識せざるを得なくなり、限りある認知「処理能力」を目標間で奪い合うという弊害が生じる。
貯蓄者の思考のなかで繰り広げられる複雑なトレードオフ(子どもの教育費のために貯金したお金は老後の資金には回せない)により、結果として、貯蓄という包括的な目標を達成しようとする注意力が削がれてしまう、とソマンとザオは結論づけている。
目標達成が困難なときほど、この現象は顕著に現れる。達成が難しい目標が多ければ多いほどこのトレードオフは顕著になるため、結果、目標をひとつに絞って取り組んだほうがよほど効果的だということになる。
インドの町を対象としたこの事例は、いまの自分からはかけ離れすぎていて現実感がないと感じるかもしれない。だが、欧米諸国で暮らす人びとも実は同じことをしている――常に達成困難な目標を複数掲げている――ということをお忘れではないだろうか?