家計に例えると年収の10倍以上の借金を抱えていることになる
吉田:うまいこと考えましたね。「お金がないから貸してください」って言うと警戒されちゃうけど、国債は買った人が儲かるしくみになってるからどんどん売れるんですね。
アカツキ:その通りだ。政府がどんどん国債を発行した結果、2023年末時点の国債残高(普通国債)は1043兆7786億円で、過去最大になってしまった。これに短期の借入金などを合わせたのが、最初に言った1286兆円だ。2024年度予算の歳入は112兆6000億円だから、家計に例えると年収の10倍以上の借金を抱えていることになる。
吉田:年収500万円の人が5000万円の借金を抱えてるのと同じってことですね。
アカツキ:ところが、今言った112兆円の歳入のおよそ3分の1にあたる35兆4000億円は国債を売って手に入れるお金、借金なんだ。税収など実質的な歳入は77兆2000億円しかないから、その約17倍の借金を抱えていることになる。年収500万円の人なら、約8500万円の借金ってことだな。
政府の人たち、「こんなに借りたらやばいぞ」って思わなかったんですか
吉田:なんでそんなにじゃんじゃんお金借りちゃうんですか。政府の人たち、「こんなに借りたらやばいぞ」って思わなかったんですか。
アカツキ:日本の官僚のみなさんはとても優秀なんだが、その頭脳をもってしても計算できない事態が起きた。2000年以降でみると、新たに発行される国債はだいたい30兆~40兆円台で推移してきた。状況を激変させたのが、コロナ禍だ。経済の落ち込みへの対策などに巨額の費用をつぎ込み、2020年度に過去最大となる108兆円の国債を発行した。その結果、2022年12月には初めて国債残高が1000兆円を超えてしまった。
吉田:うわぁ。街の中だけじゃなくて、国の財政も非常事態宣言だったんですね。
アカツキ:うまいが、笑える状況じゃないんだ。国債の残高が増えると、返済額も、払わなければいけない利息も増える。2024年度予算では、借金を返したり、利息を払ったりするための「国債費」が27兆円で、歳出総額の約4分の1を占めた。このお金を捻出するために、新たな国債を35兆円発行するという構図だ。日本の財政は借金を返すお金を手に入れるために借金を重ねるという、まさしく火の車状態なんだ。
吉田:しかも、返すお金が27兆円で借りるお金が35兆円って、また借金増えてるじゃないですか! そんなのいつか破綻するに決まってますよ。
アカツキ:もちろん、政府も強い危機感を持っている。吉田の言う通り、現在は借金の返済や利息の支払いに使う「国債費」よりも、新たな借金の方が多い。つまり、公共事業をしたり、行政サービスを提供したりするためのお金も一部、借金でまかなっているということだ。政府は財政再建の第一歩として、2025年度に新たな借金を国債費と同額以下に抑えることを目標にしている。これをプライマリーバランスといって、達成すれば少なくとも借金は増えず、横ばいになる。
吉田:目標を達成して、やっと横ばいかぁ。すごい額の借金を抱えた状況は変わらないわけですよね。