【102】2014年
全国の自治体の半数が消滅
人口減少ショック

 2014年5月、民間の政策提言組織である日本創成会議が「ストップ少子化・地方元気戦略」というレポートを公表した。岩手県知事や総務相を務めた同会議座長の増田寛也の名前をとって通称「増田レポート」と呼ばれるものだ。全国1741自治体のうち896市区町村について、若年女性人口の半減によって将来消滅する可能性がある「消滅可能性都市」と定義したことで世の中に衝撃を与えた。

 当時、東京五輪の開催が2020年に決まり、日本全体が高揚感に包まれていたが、開催年の20年は一極集中が進んでいた東京の人口がついに減少に転じる年とも予測されていた。地方の過疎地域だけでなく、東京都も含めて本格的な人口減少時代に突入するという、日本にとって大きなターニングポイントなのである。2014年7月19日号では「2020年からのニッポン 人口減少ショック!」と題し、人口減少が日本経済に与えるインパクトについて論じ、人口減少で浮かぶ業界・沈む業界を占っている。

2014年7月19日号「2020年からのニッポン 人口減少ショック!」2014年7月19日号「2020年からのニッポン 人口減少ショック!」
PDFダウンロードページはこちら(有料会員限定)
『政策提言組織「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)の人口減少問題検討分科会が公表したリストが、全国に衝撃を与えた。
 若年女性(20~39歳)人口が、2010年から40年までの間に半分以下になるという「消滅可能性都市」が、全国1741自治体のうち、過半数の896自治体に上ると推計されたのだ。名指しされた自治体は無論、政府も対応を迫られた。
 6月13日、政府は「骨太の方針」の素案において、最重要課題として「人口急減・超高齢化社会対策」を掲げたのだ。
 その中では「50年後も1億人程度の人口を保持する」とし、「20年をめどに、人口急減・超高齢化の流れを変える」と大風呂敷を広げた。
「創成会議の推計も極端だが、『人口1億、出生率2%台』という政府の目標は達成不可能。責任がある政府が出す数字ではない」
 そう切って捨てるのは、人口減少問題の第一人者、松谷明彦・政策研究大学院大学名誉教授だ。「日本の人口減少は制御不能で、100年は減り続ける。むしろ、それを前提に政策を考えるべき」。
 また、三菱総合研究所の奥村隆一主任研究員も対策の具体性のなさに「政府のまやかしに近い。女性や高齢者の活用を叫んだところで、人口全体のパイは縮み、同じ比率でGDPも縮小する。五輪で今はお祭り騒ぎだが、一時的なカンフル剤でしかない。20年以降は、暗黒時代になりかねない」とあきれ顔だ。
 日本の人口減少について、識者は「古今東西、類を見ないもの」と異口同音だ。
 創成会議の推計の基となった国立社会保障・人口問題研究所の「将来人口推計・世帯数」(12年)によれば、中位推計でも10年時点の1億2805万人の人口は50年に1億人を切り、69年後の83年には半減する。最悪のシナリオでは、1億人割れは43年と、残り30年もない。
 先進主要国の中で、まさに“独り負け”。同じ敗戦国で、日本と同じ人口トレンドにあるドイツでさえ、20年前後を境に底を打ち、回復基調に入るとみられている。
 総人口が減り続ける一方で、東京都だけが人口が増えるという一極化がしばらく続くが、それも五輪が開催される20年までの話だ』

 記事にもあるように当時の安倍晋三政権は、14年に「地方創生」を掲げ、地方への人口回帰や地方経済の振興を目的とした政策を打ち出したが、地方への定住促進や地域活性化の効果は限定的だった。移住支援や地域振興策は実施されているものの、都市部からの転出数は大きく変わらず、若者が地方に定着するには至っていない。

 40年までに約半数の自治体が存続の危機にあるとした当時の問題提起は今なお深刻であり、日本の総人口は依然として減少傾向にある。特に地方での人口減少は加速しており、地方自治体の「消滅危機」は現実味を帯びている。