2012年10月6日号「日本を呑み込むAppleの正体」2012年10月6日号「日本を呑み込むAppleの正体」
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『この40年弱の間に、アップルは驚くべき成長を遂げた。特にジョブズがCEOに復帰した2000年以降の伸びがすさまじく、90年代の売上高成長率の平均が2.7%であるのに対し、2000年以降のそれは30.4%である。
 11年度は売上高1082億4900万ドル(約8.4兆円)、純利益259億2200万ドル(約2.0兆円)。9月2日には新型スマートフォンのiPhone5を発売したばかりだが、発売から3日間の販売台数は500万台を突破。同時期に400万台だった前モデルのiPhone4Sを凌ぐ初速で、勢いは止まっていない。ゴールドマン・サックスの予想では、12年度の売上高は1557億0170万ドル(約12.1兆円)、純利益は416億2100万ドル(約3.2兆円)に達する見込みだ。
 確かにアップルの製品、サービスはわれわれの暮らしを変えた。同時に、アップルはその巨大なビジネスを遂行する過程で、関係する産業・企業にも正負それぞれの影響を与えている。
 何しろ、ソニーもパナソニックもシャープも、いまやアップルの下請け企業だ。特に経営再建中のシャープは、iPhone、iPad向けの液晶パネルのビジネスがなければ、途端に進退窮まってしまう。その他、部品、加工、工作機械を含め、世界に誇った日本のものづくりは、すっかりアップルの支配下にある』

 その後もアップルの躍進はとどまることを知らず、22年には全世界の上場企業として初めて時価総額3兆ドルを超えた。2023年度の売上高は3832億9000万米ドルと、2012年時点から2倍以上になっている。2000年以降10年間の急成長ぶりには及ばないものの、この10年の平均成長率は年11.1%と、2桁成長を維持している。

【101】2013年
2%インフレ目標へ
日銀「異次元緩和」の衝撃

 2013年3月に黒田東彦が日本銀行総裁に就任すると、その直後の4月4日の政策決定会合においてデフレ脱却と経済活性化を目的に「量的・質的金融緩和」と呼ぶ政策が発表された。マネタリーベース(市場に供給される現金と銀行が保有する準備預金の合計)の「量」を2年間で倍増させること、そのために長期国債やETF(上場投資信託)など購入する資産の「質」を変えること。そして2%のインフレ目標を掲げ、物価の持続的な上昇を目指すとする内容である。後に「異次元緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和策だった。