【103】2015年
東芝の不正会計が明るみに
罪深き業績至上主義
2015年4月、東芝が、長年にわたり不正に利益をかさ上げしていたことが明らかとなった。東芝は2008年のリーマンショック以降、厳しい経済環境の中で、経営陣が「チャレンジ」と呼ばれる高すぎる業績目標を掲げ、各事業部門に大きな圧力をかけてきた。目標未達をごまかすために会計操作が行われ、08年から14年までの累計で利益水増し額は2306億円にも及んでいた。
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4月に疑惑が持ち上がった東芝の「不適切会計」問題は、底なし沼のように次々と不正が判明しつつある。5月に設置された第三者委員会による調査で、2014年3月期までの営業利益の水増しは1700億円を超える規模になることが明らかになった。さらに、半導体部門で、利益減少に伴う繰延税金資産の取り崩しなどが発生し、最終的な損失額は全体で3000億円規模にまで上りそうだ。
しかも不正は、全社で組織的に行われていた実態が明らかになりつつあり、第三者委員会は歴代社長の責任を厳しく追及している。特にインフラ部門では田中久雄社長と、前社長の佐々木則夫副会長が、損失計上を実質的に先送りするよう指示していたとみられ、引責辞任する方向となっている。
さらに、問題は2代前の社長の西田厚聰相談役にまでさかのぼる見込みで、第三者委員会は、歴代経営陣で引き継がれてきた「組織的な不正」を、間もなくまとめる報告書で認定する見通しだ。会社の存続に関わる致命的な危機といえるだろう』
不適切会計を調べてきた第三者委員会は、社内に業績至上主義が蔓延(まんえん)しており、歴代3社長が現場に圧力をかけるなどして、「経営判断として」不適切な会計処理が行われたと断定。「経営トップらを含めた組織的な関与があった」と指摘し、記事にあるように現職社長の田中久雄をはじめ、前社長の佐々木則夫、相談役の西田厚聰を含む経営陣9人が総辞職する事態となった。
その後、東芝はリストラや事業売却を進める一方で、15年11月には米国の原子力子会社ウェスチングハウス(WH)における巨額損失が発覚。この損失は7000億円以上に上り、経営はさらに悪化した。WHの破産申請によって経営は窮地に追い込まれ、17年には債務超過を避けるため、主力事業である半導体部門「東芝メモリ」を売却する決断を余儀なくされた。
さらに、アクティビスト(物言う株主)と経営陣との対立も激化し、経営の迷走が続く。23年には国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)陣営による買収提案を受け入れ、23年12月に上場企業としての74年の歴史に幕を閉じ、非上場企業として経営再建を進めている。