1913年に(大正2)に創刊した「ダイヤモンド」は、2024年に111周年を迎えた。そこで、大正~令和の日本経済を映し出す1年1本の厳選記事と、その解説で激動の日本経済史をたどる「111年111本」企画をお届けする。第21回は平成後期、2012~15年までの4年間だ。
【100】2012年
日本の電機業界を下請けに
アップル経済圏の苛烈
2012年9月時点で、時価総額世界一にして史上最高額の企業は米アップルである。当時の最新スマートフォン「iPhone5」の発表を機に同社の時価総額は6579億ドルに達した。米JPモルガン・チェースの試算によれば、iPhone5の登場は、米国の第4四半期の国内総生産(GDP)の伸び率を最大0.5%押し上げるという。とてつもない影響力を持つ巨大IT企業である。
アップルの成功は、創業者であるスティーブ・ジョブズの製品に対するこだわりや、新しいサービスについての卓見なしにはなしえなかったのは事実だ。しかし、アップルの真のすごみは、ジョブズのビジョンを現実のものにしていく「組織の力」にある。そして、アップルのビジネスに関わる企業・産業は例外なく、その激しさ、厳しさに巻き込まれていく。
2012年10月6日号の特集「日本を呑み込むAppleの正体」は、そうしたアップルの苛烈なビジネス手法の裏側に焦点を当てたものだ。かつて“ものづくり大国”として鳴らした日本の電子産業は、アップルに生殺与奪の権を握られていた。その他、アップルのつくった新市場や競争ルールの下で翻弄される業界の実情に迫っている。