退職後「不幸になる人」と「幸せになる人」の決定的な差、ハーバードの研究で判明Photo:PIXTA

高齢化が進む中、仕事を退職してからの人生をどう生きるかについて、関心が高まっている。「FIRE」も大きなブームとなった。ハーバードビジネススクール名誉教授のテレサ・アマービレ氏は、人々がどのように引退生活に移行していくのかについて、長年調査を続けてきた。調査の結果、幸せなセカンドライフを手に入れるためには、「4つのタスク」を実行する必要があることが分かったという。また引退生活への移行に失敗してしまったケースとは。詳しく話を聞いた。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

「FIRE」や「定年後」の本がブームに
「退職」に関心が集まるわけ

佐藤智恵 近年、日本では、「FIRE」(Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職))や「定年後」をテーマとした本がブームとなっていますが、米国でも同様の現象が起きていると聞いています。なぜ今、「退職」が関心を集めているのでしょうか。

テレサ・アマービレ それはとても面白い質問ですね。その理由は主に2つあると思います。1つは、人々の寿命が伸び、退職してから寿命を迎えるまでの年数が20~30年と長くなったこと。世界各国で人口の高齢化が進展する中、人生の3ステージ「教育→仕事→引退」の「引退期間」をどう過ごせばいいのかについて、人々の関心が高まっているのではないでしょうか。

 もう1つは、現代の職場環境がますます過酷になっていること。会社からは長時間労働を強いられ、ストレスはたまるばかり。若者の間で「できるだけ早く退職して、会社から解放され、自分の好きなことをしたい」と考える人が増えているのも無理もありません。

佐藤 なぜ若者は「FIRE」に憧れているのでしょうか。

アマービレ 私たちが調査した米国のミレニアル世代の若者37人に共通していたのは、「自分たちは祖父母がもらっているような年金はもらえないだろう」と考えていたことです。若者の多くが心配していたのは「老後の資金」。この不安が「FIRE」ムーブメントにつながっているのだと思います。