野村アセットマネジメントら機関投資家が「京都FG・土井社長」に杜撰な賛成票、株主賛成率「大幅アップ」に影響した疑いPhoto by Yasuo Katatae

2024年6月開催の株主総会で株主賛成率を急回復させたのが、京都銀行を傘下に持つ京都フィナンシャルグループ(FG)の土井伸宏社長だ。だが、株主賛成率の大幅アップには、機関投資家による杜撰(ずさん)な投票も影響した疑いがあることがダイヤモンド編集部の取材で判明した。連載『メガバンク・地銀・ネット銀を大解剖[最新]銀行ランキング』の本稿では、決算資料の数字さえも確認せずに取締役選任の賛否を判断する、機関投資家の怠慢ぶりを詳報する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

24年株総で京都FG土井社長の
賛成率が急回復した要因とは?

 地方銀行各行の間で、2025年6月の定時株主総会に向けた緊張感が高まっている。中でも京都銀行を傘下に持つ京都フィナンシャルグループ(FG)の土井伸宏社長の株主賛成率の行方には、市場関係者も注目している。京都FGは地銀の中で政策保有株が最も多く、ROE(自己資本利益率)が低水準なためだ。

 発端は、アクティビストの英シルチェスターが動いたことにある。シルチェスターは今年1月、京都FG株を買い増し、保有割合を6.59%から7.63%に増加させた。

 それだけではない。京都FGは2月7日に巨額の株式売り出しを公表。大株主である東京海上日動火災保険など5社の売り出しは株式全体の7%近くに達し、京都FGにとって安定株主比率は低下する。3月末の議決権基準日が迫る中、土井社長の株主賛成率には逆風だ。

 下表を見てほしい。土井社長の株主賛成率は、23年に62%まで低下していた。だが24年の賛成率は一気に13ポイント以上も改善し、75.04%まで跳ね上がった。

 なぜ土井社長の株主賛成率は急回復したのか。

 京都FGサステナビリティ経営統括部はその背景について、「土井社長自身が国内のIR活動に加え、北米、欧州、シンガポールの海外機関投資家を訪問し、対話の機会を設けている。海外投資家から『(議決権行使助言会社の)ISSに準拠するものの、京都FGの話を聞いて考え方を理解したので、今回は賛成とする』というレターを受け取ることもあった」と説明する。

 確かに、このような施策が賛成率アップに寄与した面もあるだろう。だが背景を具体的に分析していくと、野村アセットマネジメント(AM)など機関投資家の怠慢によって、土井社長の株主賛成率が“かさ上げ”されていたことが判明した。

 次ページでは、土井社長選任議案に対する機関投資家20社の賛否と反対理由に加え、野村AMを含む杜撰な議決権行使を行った機関投資家3社の実名を公開する。