国民民主党の玉木雄一郎代表の不倫や、自民党の裏金問題をはじめとする政治腐敗に対する有権者の怒り。大きな政策決定ができない不安定な石破政権と、今後の政局は――。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が読み解く。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
政治腐敗に対する有権者の怒り
30年ぶりの決選投票を経て自民党の石破茂総裁が第103代首相に選出され、11月11日に第2次石破内閣がスタートしました。
同じ日の午前中、ネットメディア「Smart FLASH」が、先の衆院総選挙で躍進した国民民主党の玉木雄一郎代表の不倫スキャンダルを報じました。玉木代表はすぐに記者会見を開き、「報道された内容はおおむね事実」と認めながら議員辞職は否定し、代表職の継続も決まりました。
焦点は「政治とカネ」です。不倫相手との宿泊や会食に、一部でも政治資金が流用されていたら、公私混同の責任を追及されます。自民党の裏金問題で、「政治とカネ」に関する有権者の意識が高まっている時期でもあり、国民民主党はこの問題を率先して批判してきた政党です。身内に甘いのでは、公党として信用を失います。
総選挙で自民・公明の与党が敗北した原因は、裏金問題をはじめとする政治腐敗に対する有権者の怒りでした。総選挙の時点で、石破氏はまだ何も仕事をしていません。有権者は石破氏に対してではなく、自民党に厳しい評価を下したのです。
むしろ、石破氏以外の誰かが自民党総裁になっていた場合、裏金議員の一部を非公認にし、その他の議員についても比例重複を認めないという決断はできなかったと思います。その点で石破氏の姿勢は正しかったと考えます。こういう形でしか自民党の腐敗体質を除去し、新陳代謝を促すことはできなかったのです。仮に岸田政権のまま総選挙に臨んでいたら、惨憺たる結果になっていたでしょう。