税務調査に選ばれるのは、財産額が大きい方だけではありません。実は、国税局は、日本国民全員が、だいたいどれくらいの財産を所有しているかという情報を、超巨大なデータベースで管理しています。これをKSK(国税総合管理)システムといいます。

 調査に選ばれるのは、このKSKに登録されているデータと、申告した財産額に大きな差がある人です。例えば、「KSK には2億円ほどの財産を所有していると登録されているのに、申告した財産額は5000万円だけ」という人がいれば、間違いなく税務調査に選ばれます。

税務署に狙われるNG行動は「これ」だ!

 税務署は「怪しい」と目を付けると、亡くなった方と、その家族の預金通帳の取引履歴10年分を銀行から取り寄せ、机上調査を進めます。

 そこで、生活費にしては多すぎる現金引き出しの形跡や、家族への年間110万円を超える送金の履歴を発見し、相続税や贈与税を追徴課税できる見込みが高いと判断した家庭に対して税務調査が行われます。このようなプロセスであるため、お金持ちでなくても税務調査に選ばれることはよくありますし、一度目を付けられれば、プロの目を誤魔化すことはできないのです。

 年末年始、終活や相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。

他にも「こんな人」が狙われる

 他にも税務調査に選ばれやすい人の特徴があります。それは適用される相続税の最高税率が高い人です。

 例えば、遺産1億円、相続人1人(子)の家庭と、遺産2億円、相続人4人(子)という家庭がある場合、どちらのほうが調査に選ばれる可能性が高いと思いますか?

 財産規模は2億円の家庭のほうが大きいですが、私が調査官なら遺産1億円、相続人1人(子)の家庭を調査します。

 その理由は適用される相続税の最高税率にあります。遺産1億円、相続人1人の場合、適用される最高税率は30%。一方で、遺産2億円、相続人4人の場合、適用される最高税率は20%。この2つの家庭で、仮にそれぞれ1000万円の申告漏れ財産が見つかった場合、最高税率30%なら追徴税額は300万円ですが、20%なら200万円になります。

 調査官目線で言えば、同じ労力でも成果が1.5倍も変わるのです。調査官の仕事は、限られた時間とエネルギーの中で、効率よく追徴税を徴収していくことです。適用される最高税率が高い人から優先して調査したほうが、税務署のコストパフォーマンスも向上するというわけです。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続 お金の不安が消えるエンディングノート』を一部抜粋・追加編集したものです)