「トップ10%論文」は
G7で最下位に
24年に行った学長アンケートで、多くの国立大学の学長たちがこうした状況を問題視していることがわかった。
76人(回答者の96%)が「運営費交付金の変化」について、75人(同95%)が「研究費の多くを競争的資金で得るようになった一連の政策」について、「影響が大きかった」と回答した。
法人化後の20年間に国立大学が「悪い方向に進んだ」「どちらかと言えば悪い方向に進んだ」と答えた計53人(同67%)でみても「運営費交付金の変化」は52人が、「研究費の多くを競争的資金で得るようになった一連の政策」は49人が「影響が大きかった」と回答。(図表2-2)「選択と集中」を進めてきた政府に対して、批判的な回答が多数を占めた。
旭川医科大学の西川祐司学長は「競争的資金への依存度が高まり、申請作業に多くの時間が取られ、教職員が疲弊している」と指摘。信州大学の中村宗一郎学長は「運営費交付金が減額され、過度な競争がなされることで、大学の基盤を中長期的、安定的に支える仕組みが弱まっていることに危惧を感じる」と書いた。
旧帝大の一つ、名古屋大学の杉山直総長は「これまで基盤的経費(運営費交付金)を削る一方で競争的資金を増やしてきたが、両者をバランス良く配分する『デュアル・サポート』を実現することが強く望まれる」とした。
法人化以降の20年間に国が進めてきた「選択と集中」政策は、具体的には以下のようなものだ。
まず、首相が議長を務める政府の総合科学技術・イノベーション会議などが、国として重点を置く分野を決める。その方針に沿うように、東京大学や京都大学といった世界的な研究力を誇る大学や、AI・量子技術やバイオテクノロジーといった特定分野の研究者らに予算を_集中的に投下する。一方、地方大学や基礎研究、文系の研究分野などに使われる運営費交付金などの予算を減らしたり、抑制したりした。
その結果、20年の間に進んだと言われるのが、日本全体の研究力の低下だ。国別の研究力を測る有力な指標である「トップ10%論文」(引用された数が各分野の上位10%に入る、注目度が高い論文)数の順位は、04年の4位から13位に低下。G7で最下位となっているうえ、最近では韓国やスペイン、イランよりも下位となっている。(図表2-3)