11月16日、熊本県でバスや鉄道を運行する5社が、全国交通系ICカードの利用を取りやめた。廃止当日に各所を取材すると、圧倒的な勝ち組の存在も明らかに。全国の自治体が熊本に注目する真相を探った。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
キャッシュレス時代に逆行するような
交通系ICカードの廃止
2024年11月16日より、全国相互利用が可能なSuicaなど10種類の交通系ICカードは、運賃のお支払いにご利用いただけません。当面の間、くまモンのICカードおよび現金でのお支払いをお願いいたします――。
11月16日土曜日、熊本県内を走るバスの車内では、全国交通系ICカードの利用停止を告げるアナウンスが繰り返し流れていた。
前日まで使っていた交通系ICカードが利用停止になり、乗客は大混乱だ。誤ってSuicaやPASMOなどをかざすとエラー音が鳴り、何が起こったのかを理解できずに立ち往生する乗客が相次いだ。乗車後に現金の持ち合わせがないことに気付き、運転手に相談する人も。外国人観光客が現金の両替に悪戦苦闘するケースも後を絶たなかった。
運賃決済の不便さに拍車を掛けているのが、熊本のバスや電鉄電車でタッチ決済の導入が間に合っていないことだ。クレジットカードが使えるタッチ決済の導入は25年3月上旬に予定されているため、それまでの期間は現金か、地域限定型のくまモンのICカードしか使えない。
なぜ熊本では、キャッシュレス時代に逆行するような交通系ICカードの廃止に踏み切ったのか。