優勝したウエストランドは決勝の1本目も2本目も「あるなしクイズ」で、YouTuberやアイドルなど、いろんな存在をディスりまくるという毒舌ネタを披露しました。このコンプラ重視の時代によくやったもんやなと思います。
ウエストランドは、お笑い界の「生レバー専門店」やと思います。生レバーは禁止されているけど、好きな人はやっぱり食べたい。こっそり「生レバー、あります」と言ってくれる店があったらひそかに通う。ウエストランドの毒舌ネタも同じです。
世間的に何かをディスるのはよくないとされているけど、世の中であまりにも制限されてしまうと、ちょっと窮屈に感じてしまう。そこへ「毒舌ネタ、ありますよ」と言って出てきたのがウエストランドです。
彼らを最終的に優勝させたのは芸人審査員の方々ですが、ストレートで決勝進出を決め、決勝の客席でもウケていたので、そろそろ毒舌を欲している人が多かったということでしょう。
ウエストランドがいいのは、容姿端麗の人が毒を吐くのではなく、あの佇(たたず)まいの井口(浩之)くんが必死に何かをディスる姿を見せていることです。
聞いていると、けっこうひどいことを言っているのに不快感を生じさせない、なんともいえないかわいげがある。それこそ井口くんという「人間」が見えるから聞いていられる漫才になっていると思います。
それに何気ない言葉のチョイスも上手い。実は単なる毒舌ではなく、毒舌をうまく調理していたので、特に芸人の間では納得の優勝でした。ウエストランドは、周りを気にせず、自分たちの面白いと思うネタを追求したからこそ、これだけの「強さ」を出せたんやと思います。
石田 明(著)
僕自身の話をすると、NSCではなく、オーディションで入りましたが、吉本所属でよかったと思っています。
吉本は365日、必ずどこかで舞台をやっているから、出られるチャンスは多い。そしてチャンスが多いだけに、出られなかったときの悔しさ、「何くそ」感は生半可なものではありません。「なんでこんなにチャンスがあるのに、1つも回ってこないんや」と。
そんなめちゃくちゃ激しい競争があるなか、常にレベルの高い人たちの芸を見たり、そうした人たちと直(じか)にお話しできたりと、縦のつながりによって成長させてもらったという感覚も強いですね。
吉本に所属できていなかったら、今の僕はありません。