オリンピックなどへの採用も間近とされるeスポーツは、世界では巨大市場として確立している。そしてその波はすでに日本にも。トップ大会のオンライン視聴者数は1試合当たりでなんとプロ野球・阪神戦と巨人戦の年間入場者数を優に超え、特にZ世代はイベントや推しチームへの強烈な支持と消費を惜しまない。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#13では、今後既存スポーツと並ぶ市場規模になりそうなeスポーツ市場の実情を見ていこう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
グラミー受賞リンキン・パークが前座を務める世界大会決勝!
数百万人を動員する「リーグ・オブ・レジェンド」
11月2日、英ロンドン、O2アリーナ。会場を埋める2万人の観客の前に、全世界累計セールス1億枚以上、グラミー賞2回受賞のロックバンド、リンキン・パークが登場した。
激しい炎とサーチライトの演出で輝くステージで新曲「Heavy is the crown」が演奏される中、舞台から優勝カップがせり上がってきた。ボーカル、ギターのマイク・シノダが叫ぶ。「Worlds2024のファイナリスト、チームBLGとチームT1の入場だ!」。
会場の熱気が最高潮に達する中、白いユニフォームを着た両チームがスモークのたかれた左右の通路から入場、センターステージに設置されたゲーミングチェアに着席する――。
これは、Worlds2024の世界大会決勝のオープニングアクトの一こまだ。Worldsとは「League of Legends(LoL)」の世界大会。LoLは、米ライアットゲームズが2009年から運営する、5人対5人のオンライン対戦ゲームだ。eスポーツのプレイヤー人口が世界最多といわれているゲームであり、その大会の規模も世界トップとなっている。
17年にボーカルのチェスター・ベニントンが死去したことで、活動を7年間休止していたリンキン・パーク。24年に再結成し、ワールドツアーを開始する皮切りにWorlds開会式出演を選んだのだった。Heavy is the crownはWorlds2024大会の主題歌として書き下ろされた曲でもある。
Worlds2024には韓国、中国、北米、欧州から16チームが参加した。決勝戦で中国のBLGを撃破して優勝した韓国T1には総額222万5000万ドル(約3億3952万円)の賞金プールから45万ドル(6866万円)の報酬が与えられた。そしてこの決勝戦では、たった1日で日本のプロ野球の阪神戦と巨人戦の年間入場者数の合計を上回る視聴者数を動員してしまった。
オリンピックの公式種目への追加が検討されているeスポーツだが、そもそも「一部の限られたマニアの間で親しまれているイベント」というような存在ではとうにない巨大なものになっている。巨額の賞金と、膨大な数に及ぶ世界の観客動員、さらにまるでNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)スーパーボウルのハーフタイムショーのように、グラミー賞受賞の世界のトップアーティストが前座を務めるというような、一級の巨大イベントになっているのだ。
世界市場が規模では圧倒しているeスポーツだが、その波は日本にも届き始めている。そしてeスポーツは、他のイベントやサービスがリーチし切れていなかった顧客層にも刺さるイベントとして、これまでゲームとは特に関係がなかった企業からも注目されている。日本の食品や飲料などの大手企業の多くもチームや大会のスポンサーになっている。
ただし、日本のゲーム企業に目を向けると、世界のeスポーツ大会でのプレゼンスは驚くほど低い。巻き返すことはできるのだろうか。次ページからじっくり見ていこう。