外貨獲得で半導体・鉄鋼レベルに! 50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム#14Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

10年前はゲーム専用機を駆逐するかのような勢いがあった、日本のモバイル(スマートフォンとタブレット向けの)ゲーム。ところが現在、各社の業績は苦戦が続き、大手のサービス終了も相次いでいる。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#14では、日本のモバイルゲームがいったいどうしてここまで凋落したのかをベテランアナリストが読み解く。(東洋証券アナリスト 安田秀樹)

故・任天堂岩田社長の危機感から10年で様変わり
モバイルゲームが次々とサ終を迎える事態に

「投資家やメディアの方々から、ゲーム専用機の将来について問い合わせを頂くことが多くなった」――。これは、2015年に任天堂がモバイルゲーム市場にディー・エヌ・エー(DeNA)と共に参入すると発表した際に、岩田聡・任天堂元社長(故人)が発した言葉である。

 15年当時の任天堂はニンテンドー3DSとWii Uの失敗もあり3期連続の赤字に転落するなど、苦境に陥っていた。その一方でガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」を嚆矢として、MIXIの「モンスターストライク」など年商1000億円級の大ヒットがモバイルゲームから続々と生まれていた。

 さらに16年には、任天堂の関連会社であるポケモンが米ナイアンティックと共同で位置情報モバイルゲーム「ポケモンGO」をサービス開始した。豪州で警察署が「ポケモンGO」のために来署しないように呼び掛けたツイートをきっかけに爆発的なヒットとなり、ダウンロード数は数億単位という途方もない数に達した。このように、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進するモバイルゲームは、ゲーム専用機を凌駕し、専用機の市場は近い将来なくなるとまで思われていたのである。岩田元社長の発言には、そのような時代背景が色濃くにじんでいる。

 しかしそれから約10年後の24年現在、筆者の予想通りであるが、当時は一般にはあまり想像されていなかったことが起きている。モバイルゲームのサービス終了(ゲーマー間では「サ終」と略される)が相次いでいるのだ。

 それは任天堂ですら例外ではない。「どうぶつの森」シリーズのモバイルゲームである「どうぶつの森 ポケットキャンプ」は運営型としてのサービスを終了し、買い切り型である「どうぶつの森 ポケットキャンプ コンプリート」に移行することになった。さらにスクウェア・エニックス・ホールディングスやバンダイナムコホールディングスはモバイルゲームを含む事業で巨額の損失を出し、モバイルゲーム専業メーカーでもゲームセグメントで赤字を出す企業が多くなった。

 ゲーム市場としては世界・日本共に最大規模、世界では成長市場のはずのモバイルゲーム。いったい何が起こっているのだろうか。次ページからその原因について、詳細に分析していこう。