丸紅は11月27日、常務執行役員で次世代事業開発本部長の大本晶之氏を次期社長にする人事を発表した。大本氏は一度マッキンゼーに転職した「出戻り」の経歴を持つ。丸紅一筋の社員にバトンを託さなかった柿木真澄社長には、同社の「完全実力主義」をアピールする思惑があるようだ。連載『クローズアップ商社』の本稿では、丸紅の社長人事の本質に迫る。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)
歴代3位の若さで社長就任へ
ごぼう抜き人事で慣例と決別
新社長となる大本晶之氏は55歳。トップ就任時の年齢としては、ロッキード事件で有罪判決を受けた故檜山廣氏に次ぎ、丸紅では歴代3位の若さとなる。
大本氏は2025年4月1日付で社長に就き、その後6月開催の株主総会において代表取締役に就任する。
柿木真澄社長は、次世代事業開発本部で「0」から収益基盤を築いた点や、駐在員として各地で交渉力を発揮した大本氏の実績を買ったようだ。
10月、柿木氏から次期社長を打診されると、大本氏は「しっかり成長へつなぐ」と覚悟を決めた。
柿木氏は新社長発表の記者会見で、「かなり前から一目置いていた人物。丸紅が高みを目指して全力で駆け上がるためには、彼のような若い能力ある人が引っ張るのがふさわしい」と期待感を示した。
下馬評では大本氏より年次が上の役員の名もあったが、同氏は「ごぼう抜き」で社長の座をつかんだ。
他方、「2代連続で電力畑からの社長起用にやっかみを受けるだろう」との予測もある。しかし、関係者からは「大本さんなら、それをも跳ね返す働きをしてくれるだろう」との声も出ている。
この起用から見えてくるのは、丸紅が年功序列の空気を排除し、「完全実力主義」にかじを切ったということだ。
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