これに対して、「ん~。2022年1月頃から昏睡状態になっていましたね」と素直に答えると、調査が後半に進んでから「2022年に親子間の送金がありますが、2022年の時点でお父様の意識はなかったと先ほど仰ってましたよね。すると、『あげた、もらった』の約束はできていなかったことになりますが、そのあたりはどうですか?」と追及されることになります。
調査の前半では相続税に関係なさそうなことばかり質問されますが、これらはすべて調査の後半で納税者の言い逃れを潰すための布石です。外堀を完全に埋めてから、核心的な質問を投げかけるので、どんな嘘もあぶり出されてしまうのです。
贈与契約書の作り方
そもそも、贈与契約は口頭だけでも成立するので、証拠がなくても贈与は成立します。しかし、転ばぬ先の杖として、証拠はしっかり残しておきましょう。私が最もオススメするのが贈与契約書です。契約書と言うと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、シンプルなもので大丈夫です。
あげる人(贈与者)、もらう人(受贈者)、贈与するもの(金額)、贈与する日(引き渡す日)、お互いの住所・氏名を書き、押印して完成です(認印でも実印でもOK)。贈与契約書は2通作成し、お互いが1通ずつ保管しましょう。大事なポイントは「氏名だけは必ず直筆でサインすること」です。それ以外はパソコン等で作成してもかまいません。
氏名が直筆でないと、贈与があったことを証明する証拠として意味がありません。税務調査では、筆跡が非常に重要な証拠として扱われます。人の字には十人十色の癖があります。亡くなった方の手帳などに記載されている字と、契約書の字を比べれば、本人が書いたかどうかはすぐわかってしまうのです。
年末年始、相続や贈与のことで家族と話し合う際、ぜひ参考にしてください。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・追加加筆を行ったものです)