そのため、その期間でビジネスパーソンとしての実力を認められ、信頼関係を築くことができれば、買い手企業からヘッドハンティングを受けるケースもあります。その場合、基本的には営業職として転職することになります。

 1点注意が必要なのは、M&A仲介では年収水準がかなり高くなるため、M&A仲介以外で営業としてキャリアをつくりたい場合は、転職を見据えて生活水準を不用意に上げすぎないことです。また、どのようなキャリアを歩みたいか、定期的に見直す機会を設けることも大切になります。

2. CFOとして、財務プロフェッショナルを目指す

 CFOを目指す場合には、M&A仲介企業に転職した後、営業経験だけではなく財務知見を得ることを意識しておく必要があります。

 M&A仲介企業では、財務諸表の読み方や収益性分析、キャッシュフロー管理といった基本的な財務知識を学ぶことができますが、さらに一歩進んで、デューデリジェンスのスキルや企業価値評価の実践的な経験を積むことが重要です。

 M&Aや財務について学ぶ文化や仕組みがある企業を転職先として選択することが大切になります。

3. FASのFAとしてM&A領域の専門性を高める

 ファイナンシャルアドバイザリーサービス(FAS)のFA業務は、M&Aにおける高度な専門知識を必要とする分野で、特にハイレベルなアドバイザリー業務に関わる職種です。FA(ファイナンシャルアドバイザー)は、企業のM&A戦略立案から交渉、取引完了に至るまで、総合的なアドバイザリー業務を担います。仲介業務において次のような実績があれば、FA業務への挑戦が現実的になります。

・売り手または買い手のどちらかが上場企業である
・ディール金額が50億~100億円以上

 そもそも大型案件を経験できるかは、企業規模によって左右されます。例えば、M&Aキャピタルパートナーズは大型案件が多いことで有名です。

 非上場企業同士のM&Aは、証券取引所のルールによりエグゼキューション(手続きの実行)が簡易ですが、あえて経験を重視して上場企業との取引を意識的に取っていくという動き方も、大型案件を経験するためには重要になります。

 どの業界・職種に転職しても言えることではありますが、転職後に「キャリアが広がる」ことは一般的にはありません。年齢を重ねるごとに、絞り込んでいくものです。そのため、どの業界・職種に転職するかということも大切ですが、その先で何をやりたいかを考えて戦略を持って進むことが何よりも大切になります。