火災で船体から煙を上げる海上自衛隊の掃海艇「うくしま」=11月10日午後、福岡県宗像市の大島沖火災で船体から煙を上げる海上自衛隊の掃海艇「うくしま」=11月10日午後、福岡県宗像市の大島沖[福岡海上保安部提供] Photo:JIJI

海上自衛隊の掃海艇「うくしま」が11月11日、福岡県宗像市沖で火災を起こし沈没した。この件について、筆者は前回の記事で、同型の掃海艇で似たような原因の火災が発生していたことを突き止め、再発防止がとられていなかった疑念を指摘した。さらに今回、自衛艦が沈没するに際して、必ずとらなければならない措置が講じられていなかった可能性が新たに浮上した。(安全保障ジャーナリスト、セキュリティコンサルタント 吉永ケンジ)

掃海艇「うくしま」の沈没時に
秘密文書を持ち出さなかった疑惑

「あなたの記事が出て、海上幕僚監部では『誰が余計なことを話したんだ!』と大騒ぎになったそうだよ」

 驚愕の知らせは、ある海上自衛官OBからの電話で舞い込んできた。OBが指摘する記事とは、筆者が本連載で前回に書いたもので、沈没した掃海艇「うくしま」と同型艇の「ししじま」「すがしま」で、過去にエンジンの排気管から漏れ出した高熱の排ガスが木製の船体を焼いた事故が起こっていたことを指摘したものだ。

 しかし、海幕の推測は的外れで、国土交通省の運輸安全委員会が作成した「ししじま」「すがしま」の事故調査報告書はインターネットで誰でも閲覧できる。筆者は、その報告書に示された具体的な再発防止策が取られていなかったので、「うくしま」の事故につながったのではないかと問題提起したに過ぎない。

 筆者が他にも何か聞いていないかと尋ねると、OBは「世知辛い世の中だから」と前置きして、「うくしま」沈没時の状況を語り始めた。