総予測2025#64

大和総研によれば、2024年6月の株主総会で株主提案を受けた企業は過去最多タイの90社。うち株主としての権利を積極的に行使するアクティビストら機関投資家による提案は、約半数の44社に上ったという。25年もその勢いは衰えそうもない。特集『総予測2025』の本稿で、その理由を解明する。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「非中核の不動産売却を」
エリオットが東京ガスに要求

 25年もアクティビストの攻勢が続くのは間違いない。では彼らは具体的にどういった提案を行うのか。現在、アクティビストが投資先企業に働き掛けている二つの事例から、25年の提案のトレンドを読み解こう。

 その一つ目が、米エリオット・マネジメントが東京ガスに対して行っている「事業ポートフォリオの見直し」だ。エリオットは1年以上前から東京ガス株を買い集め、24年11月に5%超を大量保有した。エリオットが狙うのは、東京ガスが保有する新宿パークタワーなど不動産の売却である。

 関係者によれば、エリオットは東京ガスに対し、マンションなど非中核事業の不動産ポートフォリオを縮小し、その売却資金を電力小売事業の強化などに充てるよう求めている。東京ガスは中期経営計画で25年度にROE(自己資本利益率)8%程度の到達目標を定めており、そのためには自社株買いなど株主還元が有効とエリオット側は主張しているもようだ。

 エリオットはこれまでソフトバンクや三井不動産などに投資しているが、5%超の大量保有は20年に投資したアルプスアルパインやユニゾホールディングス以来だ。東京ガスの調査は1年以上かけて行っているとみられ、よほどの自信があるに違いない。

東京ガスに限らず、都心の一等地に不動産を持つインフラ系や物流業などの日本企業は多い。地価高騰で含み益が膨らむ中、本業との関連が薄ければ、その売却を迫る市場の圧力はますます強まるだろう。ではアクティビストが狙う二つ目のポイントは何か。次ページで明らかにする。