新型コロナ禍が終息して以降、民間航空機の需要が右肩上がりだ。航空エンジンの製造を担う重工メーカーは上昇気流に乗っている。さらに、第2次トランプ政権の発足は防衛産業にどのような影響をもたらすのか。特集『総予測2025』の本稿では、IHIの井手博社長に2025年の見通しを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)
航空エンジンのアフターサービス好調
修理棟新設で収益力さらに加速へ
――航空エンジンの好調ぶりが目立つ1年でした。
為替など一時的な要素もありますが、2024年7~9月期は良かったですね。航空エンジンではスペアパーツ販売やメンテナンスなどのアフターサービスの利益率が特に高いです。この売り上げは右肩上がりになっている。
修理にさらに注力するため、25年には埼玉県鶴ケ島市の工場に新たに修理棟を設けます。整備能力を現状の70台から400台にまで伸ばし、売上高も200億円から800億円に増やします。
――航空エンジンのサプライチェーンがタイトとも聞きます。
サプライチェーンは今本当に混乱しています。引き金となった新型コロナウイルス禍と、地政学リスクの両方の影響を受けています。欧米ではコロナ禍の影響で、航空産業でレイオフがあったため従業員がいまだに戻っておらず、航空エンジンの素材や部品が入ってこない場面もあります。
――25年の地政学リスクをどうみますか。
ウクライナ、中東情勢はもちろんですが、東アジアの情勢を特に懸念しています。中国、北朝鮮、台湾、ロシア、韓国。何か起きたときの距離感が近く、対岸の火事では済まない。重工業界にどんな影響をもたらすのか考え続けなければなりません。
米国で発足する第2次トランプ政権が防衛産業にどのような影響をもたらすのか。次ページで、井手社長が見通しを語る。