腸内環境の改善で重要な
「野菜中心の食生活」

 腸内細菌学の権威である、光岡知足東京大学名誉教授は、ある研究で長寿村として知られた山梨県棡原村(現在の上野原市棡原)のお年寄り(平均年齢82歳)を対象に、便中のビフィズス菌の量を検出しました。

 そして、都内の老人ホームで暮らす平均年齢78歳のお年寄りからも便中のビフィズス菌を検出したところ、この都内の老人ホームで暮らすお年寄りの約70%の人からビフィズス菌が検出されたのに対して、棡原村のお年寄りでは約80%の人からビフィズス菌が検出されました。

 また、悪玉菌のウェルシュ菌は、都内の高齢者の80%以上が持っていましたが、棡原村ではなんと47%の人からしか検出されませんでした。

 さらに調べると、棡原村の人たちは、他の地域の2倍以上もの食物繊維を摂っていたことがわかったそうです。

 これは山間部で野菜中心の食生活を送っていることによるものと考えられました。

 ビフィズス菌などはもちろん大事ですが、腸内環境は腸内フローラだけではよくなりません。「腸内フローラが整う」といわれるヨーグルトをいくら摂っても、それだけでは排便障害などは治りません。

【医師が解説】「腸内環境」と「腸内フローラ」って何が違うの?『腸にいい習慣ベスト100』(松生恒夫、総合法令出版)

「乳酸菌を摂って腸内環境を改善すれば、腸の健康が保たれる」と書かれている記事も散見されますが、これらは注意深く考えたほうがよいでしょう。

 乳酸菌による腸内環境の改善はあくまで1つの要素です。腸内環境は、3つの要素から成り立っています。

 したがって食べ物の種類、自律神経や腸管神経叢、腸管のぜん動運動、腸管運動にかかわる胃・結腸反射、食物繊維の摂取量、女性では月経など、さまざまな要素が腸管運動、腸内環境改善に関与しているのです。それらの機能がきちんと起こる生活習慣も心がけていきましょう。