この研究では、「肥満の人の腸内では、腸内細菌叢が変化し、短鎖脂肪酸を作り出す力が落ちている」ことも判明しました。

 要するに、腸内細菌および腸内環境が正常ならば、太りにくい体でいられるのです。

 腸内細菌は腸がもつ免疫機能とも大いに関係しています。腸内細菌は食物繊維の一部(水溶性食物繊維)を短鎖脂肪酸(特に酪酸)に変え、大腸の腸管上皮細胞の1番目のエネルギー(2番目はグルタミン)とします。小腸の腸管上皮細胞ではグルタミンが1番目のエネルギー(2番目が酪酸)です。腸内細菌の働きによって、外部から侵入した病原菌は腸内で増えることができず、感染防御の役割を果たすのです。

 また、腸内細菌には次の3種類のものがあります。

(1)ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌
(2)ウェルシュ菌などの悪玉菌
(3)大腸菌などの善悪どちらにもなる日和見菌

 腸では食事内容やストレスなど、ちょっとした健康状態によって善玉菌が優勢になったり、悪玉菌が優勢になったりしています。

 善玉菌が優勢になると、腸のぜん動運動(食べ物を運ぶために行われる腸の動き)が活発になったり、ビタミンが合成されやすくなったり、免疫力が上がったりする可能性が高まります。悪玉菌が優勢になると、ぜん動運動が弱まるだけでなく、腸の内容物が腐敗し、毒素や発がん物質がつくられる可能性が高まります。

 乳酸菌や食物繊維を多く摂り、ストレスの少ない生活で善玉菌を増やすことが、腸や体の健康に大きく影響するのです。

アレルギー患者の多くが
腸内の「悪玉菌」が優勢

 現代の日本人の3人に1人は、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状に悩んでいるといわれています。実は腸内細菌とアレルギー症状には深い関係があると判明してきています。

 アレルギー症状は、私たちの体を外部の病原菌から守る免疫の働きが過敏になることで起こります。

 近年、アレルギー疾患にかかっている患者さんの多くは、症状が出る前から腸内の悪玉菌が優勢であることがわかってきています。

 一方、腸内環境において善玉菌が多い人は、アレルギー疾患にかかりにくいという報告があります。