「代わりはいくらでもいる」
タイミーが具現化した企業の本音
しかも、そのスキマバイトに40〜60代の中高年が増えていくことは、日本経済全体にとってよろしくない。
「非正規雇用」が最も多い世代だからだ。
総務省の「労働力調査(詳細集計)」(年平均 長期時系列表10)によれば、2023年の非正規労働者2124万人の中で最も多いのが55歳から64歳で451万人(21.2%)で、次が45歳から54歳で430万人(20.2%)となっている。
よく「非正規雇用」というと「若者の貧困」みたいなイメージと繋げられるが、25歳から34歳は237万人で11.2%にとどまっている。
非正規雇用は正社員と比べると、かなり賃金が低いということは言うまでもない。賃金が低いということは毎日、生きていくだけで精一杯なので、消費も投資も活性化しない。つまり、内需が支えている日本経済は冷え込む一方だ。
しかも、この年齢で低賃金労働者となれば、老後の蓄えなどできるわけがないので結局、生活保護やらの公共サービスに頼らざるを得ない。病気や寝たきりになれば、国が面倒をみるしかない。
ではその原資はどこからくるかといえば、148.9兆円の社会保障費だ。日本のGDPの24.4%にも及ぶ莫大なカネだ。もちろん、これはすべて現役世代、つまり若い人たちが負担をする。国は医療と年金を維持することが大きな目的となり、とても「経済成長」なんて目指す余裕はない。
こういう悲惨な未来を避けるには、国民一人ひとりの生産性を上げるしかない。その結果、起こるのが「賃上げ」だ。
その中でも重要なのが、「賃金の低い人たちをどこまで引き上げることができるのか」ということだ。低賃金の日本の中でも、大企業労働者などは春闘の影響で賃上げが進んでいる。中小企業の正社員もチビチビとではあるが、賃上げの動きはある。
だからこそ、「賃金の低い人」の所得を上げる必要がある。特に非正規雇用の中で最も数が多く、人口動態的にも最も多い、40〜60代の「賃上げ」は急務だ。
しかし、残念ながら日本ではそのような動きは潰されてしまう。欧米などの先進国の場合、事業者に対して国や自治体が「賃上げ」を要請して、それに対応できない事業者は自然に市場から退場していく。しかし、日本でそういうことを言うと「弱者切り捨てか」という批判が盛り上がるのでできない。
そこでどうするかというと、社会全体で低賃金労働に依存している事業者を「保護」する。具体的には、「賃上げしなくても事業が存続できるよう、低賃金労働者を獲得できるスキーム」を提供するのだ。