わかりやすいのは外国人労働者だ。

 2018年に安倍政権が「外国人労働者の受け入れ拡大」を打ち出したとき、筆者は本連載の過去記事で「安価な労働力を国内に入れると、日本人の低賃金・重労働を固定化してしまう」と警鐘を鳴らしたが、専門家などから怒られた。

「賃上げをするにはまずは企業の業績アップが必要だ、人手不足はまったなしだ」とかなんとか言って、とにかく困っている企業の支援をすべきだと主張した。

 では、あれから6年経過してどうなったか。外国人労働者がたくさん入った業界は今も変わらず「低賃金・重労働」ではないか。あまりに劣悪な環境に嫌気がさして、受け入れ先から逃亡する技能実習生もたくさんいたではないか。

「賃上げをしなくても事業が存続するスキーム」を提供することは零細事業者保護になる一方で、日本社会に「低賃金」を固定化させてしまう。つまり、世の中に「お前の代わりはいくらでもいる」と言えてしまう低賃金労働者を増やすことにしかならない。

 残念ながら今はそのスキームに、スキマバイトが利用されてしまっているというワケだ。

 こういう批判はタイミー側もよくわかっているので、スキマバイトの賃上げや正社員化にも取り組んでいる。バイト先から高評価を受けた者は、「バッジ」が与えられ、最低賃金に200円を上乗せした時給の仕事ができるという。また、スキマバイトの人たちが正社員になれるような就職支援も進めていくそうだ。

 もちろん、本当に実現できれば素晴らしい。しかし、外国人労働者の受け入れ拡大時もあれやこれやと立派な対策が唱えられたが、その結果が今の「安いニッポン」であることを忘れてはいけない。

 スキマバイトという働き方自体を全否定するつもりは毛頭ないが、それを普及させる前にまずは「賃上げ」だ。それをやらないで中年スキマバイトが増えても、それはただ単に企業側から労働力を買い叩かれる「貧しい非正規雇用」を増やすだけにしかならないのではないか。

タイミー好決算に抱く“複雑な気持ち”…「中年スキマバイト」が増え続ける日本経済の“深すぎる闇”