それがよくわかるのが、宅配大手のヤマトホールディングス(HD)だ。

 今年度の上期の連結決算で営業損益が150億円の赤字に転落するなど、ヤマトは単価も上げられず、人件費だけ上昇したということで苦戦を強いられている。そこで頼ったのが、スキマバイトだ。

「クロネコDM便」に携わってきた約2万5000人の個人事業主の雇用契約を終了するというリストラを断行して、一方で、そこで足りなくなった労働力をスキマバイトに頼っている。

週刊現代」によれば今、ヤマトの配送所には荷物の積み込みなどで、スキマバイト経由のスタッフが増えているが、「単発」「初心者」であるがゆえ、現場が大混乱しているという。しかも、荷物の紛失などのトラブルがあった場合、ドライバーなどから「スキマバイトの連中だろ」などと疑いの目で見られる、などの問題も起きているらしい。

 なぜこんなにも現場が混乱しても、スキマバイトに依存するのかというと、「業績悪化」を乗り切るためだ。いくら個人事業主がこの仕事に慣れ、効率良く仕事ができても「雇用の調整弁」にはできないというのは、とにかく利益を上げたいヤマト的には大きなマイナスだ。しかも、彼らは賃上げも要求してくるので、それに対応をしなくてはいけないのも頭痛のタネだ。

 しかし、スキマバイトはそんな面倒な話に対応しなくていい。待遇や仕事に文句があるのなら明日から来なければいい。よくドラマなどで出てくる悪徳事業者が「代わりはいくらでもいる」なんてセリフを吐くが、まさしくそれが現実のものとなっているのだ。

 つまり、スキマバイトというのは、人件費圧縮を目指す事業者側にとってはハッピーなことこのうえないシステムなのだ。だが、労働者側は、CMや広告でうたわれているほど、ハッピーにはなれない。

 目先の利益としては、「自分の空いた時間に働ける」「単発なので嫌なら二度とやらなきゃいい」「即金でもらえる」などさまざまなニンジンがぶら下がっているので、なんとなく「働く側に恩恵のあるシステム」のように錯覚をしてしまうが、実は労働者全体の利益を考えると、「理想的な雇用の調整弁」にされているだけなので、これまでの「低賃金・重労働」が固定化していくだけだ。