志望動機は、過去・現在・未来の「自分物語」

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――面接で志望動機を答える際に、「軸」は必要なのでしょうか。

杉村 面接では必ず「志望動機」を聞かれます。数ある中でなぜこの企業なのか。それを自分の言葉で語らなければ、面接官は納得してくれません。

 今まで自分はどんな経験をしてどう生きてきたか(過去)、そこから現在の自分はどんな価値観を持つに至ったか。その上で、入社後は何に取り組み、何を実現したいのか(未来)。この過去、現在、未来の行動に一本の軸を通して語るあなただけのストーリーが、志望動機になるのです。

 過去の経験を分かりやすいエピソードに置き換え、そこから得た教訓が自分をどう成長させたのか。自分の言葉で語ることで、将来したい仕事、実現したい夢に結び付けていけば聞く人の心に響くでしょう。自己分析が不完全だとストーリーに通す軸がぶれてしまい、入社したいという思いを的確に伝えることはできません。

 ストーリーの中で企業が最も着目するのは「未来」の部分です。変化が激しい世の中で企業が成長し続けるには、現在の組織に20年、30年後も新たな可能性を見いだすことのできる人材が必要です。面接官は、そのポテンシャルを見ようとします。

 その企業で活躍する未来の自分の姿と、企業がありたい未来が一致すれば、内定を得ることができるでしょう。ただし、未来を語るには、働きたい業界や企業の置かれている現状を詳しく知っておく必要があります。

 企業が何を目指してビジネスを行っているのか。社会の中でどのような役割は果たそうとして、何を行っているのか。就職情報サイトや企業のホームページ、新聞や雑誌で調べることはもちろんですが、我究館では各種業界ゼミを開催し、業界動向や最新情報を紹介しています。

 一番大切なのは、入社試験前に希望する業界や企業で働いている人を積極的に訪問し、働く環境の様子や具体的な業務内容を具体的に知ることです。我究館には、さまざまな業界の企業・団体で働く卒業生が多数いて、後輩のために社会人訪問のきっかけづくりを支援してくれます。自分の軸が企業の未来像と合致しているのか、企業の未来にどのように貢献できるのか、社会人の先輩の話を聞きながらしっかりと考えてください。

――ここ数年、企業の新卒採用方式や選考方法が多様化しています。

杉村 新卒採用においても、近年はインターンシップによる通年採用、ジョブ型採用、AIによる1次面接など新しい採用方式や選考方法が見られるようになりました。制度やルールの変化が大きければ、ぶれない軸を持つことはより重要になります。

 特にAI面接は、面接官が判断できない視点から志願者を見る方法として欧米企業で始まり、日本でも一部の大企業が導入しています。志願者の表情や声の抑揚などをAIが細かく分析し、語っている言葉に自信を持っているかといった心理状態を判断します。

 自分と向き合い見事に内定を獲得し、希望する業界や企業で働くことになった日が、みなさんの人生の第二幕のスタートです。それまでの二十数年間以上に、いろいろな出来事を経験していかれるでしょう。ですから、社会に出た後もぜひ、異動、転職といった節目で自己分析を繰り返し行ってください。

 自己分析は、就活のためだけに行うものではありません。後悔のない、自分らしい人生を生きていくために行うものです。自分の弱さを知り、強みを知り、周りの人たちや社会と関わりながら、なりたい自分になるために必要なことは何かを考えてみてください。常に自身を見つめ直すことで夢は実現します。ここに「我究」の真価があるのです。

杉村貴子
すぎむら・たかこ/就職・転職を支援するキャリアデザインスクール「我究館」と、英語コーチングスクール「プレゼンス」を傘下に持つジャパンビジネスラボ代表取締役。我究館館長。1997年、青山学院大学経済学部を卒業後、日本航空にCAとして入社。98年、ジャパンビジネスラボ創業者の杉村太郎氏と結婚。2000年、夫の留学に伴い家族で渡米。帰国後は証券アナリスト(CMA)として、BS朝日のニュースキャスターを務める。07年、大和総研に入社。調査本部にてマーケットリサーチ、企画、新人採用・人材開発、広報に携わる。杉村太郎氏没後、14年から現職。著書に『絶対内定』(共著)、『たとえ明日終わったとしても「やり残したことはない」と思える人生にする』 ほか。
※我究館ホームページ https://www.gakyukan.net/