就活のゴールは内定にあらず……なぜ?
――「就活のゴールは内定ではない」とは、どういうことでしょうか。
杉村 我究館創業者の杉村太郎は、10代の頃から自分が進むべき道に関して探究を重ねました。小学生のころに父親が事業に失敗し、父親を東京に残して母親らと一緒に熊本へ移り住みます。
経済的な事情で熊本の私立中学進学をあきらめたこと、後に再び東京に戻り進学した高校では、教員たちから判を押したように「偏差値の高い大学へ行け」と指導され、納得がいかなかったこと、そんな背景から「悔いなく生きること」の意義を考えるようになったといいます。
やがて社会人となり、かねてから希望していた採用と人材開発に関する「人事」の仕事に携わったのですが、そこで彼が驚いたのは、就活の段階で考えておくべきことを考えず、やっておくべきことやらずに就職してくる学生の何と多いことか、という現実でした。
入社して数年たってから彼らが悩み始める姿を目の当たりにし、社会人となる直前の就活のタイミングで「悔いのない人生を歩むための未来図を描くこと」が大切であると痛感するのです。そして、これこそが就活本来の目的であることを、杉村太郎は1992年の我究館設立以来、多くの若者たちに伝えてきました。
――未来図を描くために、「自己分析」から何を見いだす必要がありますか。
杉村 自分の強みは何か。欠点をどう克服し、長所に変えたのか。そんな自分は、社会に何をもって貢献できるのか。自己分析とは、自分の価値観、いわば考え方の根幹となる「軸」を第三者の意見も取り入れながら探し、言語化していく作業です。軸は誰にでも必ずあります。ところが、漠然としていて自分ではなかなか見えない。見えたと思っても、得てして思い込みにすぎない。だから、他人に評価を得ながら言語化しておく必要があるのです。
自分の軸を客観的に理解することができれば、それを生かせる仕事は何かが見えてきます。インターンシップ、選考面接などでも自分の強みを相手に的確に伝えることができますし、また内定後に就職先を選択する際、本当に自分がやりたいことができる組織はどこかを判断する基準にもなり得るのです。
就活は、未来に向けての一歩です。入社後に「こんなはずじゃなかった」「思っていたのと違う」と後悔しないよう、10年後、20年後に自分はどうありたいかという長期的視点から就職先を選ぶために必要なのが、自己分析なのです。