センターサーバー方式を採用した
「新しいSuica改札システム」
技術面からSuicaを見ると、その中心はソニーが開発したICカード「FeliCa」だ。やや込み入った話になるが、ここを理解しなければ新しいSuicaシステムを理解できないため、お付き合い願いたい。
SuicaシステムはICカードと端末(自動改札機など駅務機器)の間で行われる処理の積み重ねで成立している。カードの入場記録を改札機が読み取り(リード)、運賃を引いたチャージ残高で上書きする(ライト)。
カードの処理情報は、駅のサーバーを介して、全カードの全情報を管理するセンターサーバーに送られ、カード本体の情報とセンターサーバーの記録を同期する。自動改札機、駅サーバー、センターサーバーがそれぞれデータを保持するので、サーバーがダウンしても最低3日間はシステムが稼働する冗長性もある。
1990年代の技術でSuicaシステムを構築するには、これしかやりようがなかったが、今となっては、リード・ライトが可能なセキュリティの高いICカード、運賃テーブルを格納した自動改札機などのハードが必要で、コストが高く、拡張性に乏しい。
そこで導入が進むのがセンターサーバー式Suicaシステムだ。カードと端末で処理してからサーバーに送るのではなく、Suicaの利用データを直接サーバーに送り、サーバーで処理すればシンプルだ。それが新しいSuicaシステムである。
そのほうが良いことはJR東日本も分かっていた。Suica開発時も参加メーカーから、ICカードは読み取り専用として、IDをもとに運賃計算や残高管理をセンターサーバーで処理をする方式の提案があったしたという。
しかし、JR東日本は、ラッシュ時に生じる膨大なトランザクションを、自動改札機を通過するわずかな時間でオンライン処理するのは困難と考えていた。またネットワークやセンターサーバーの障害リスクを避けるため、ローカルで処理が完結する分散自律システムを採用した。
だが、2000年代の情報通信技術の発達で、ネットワークは高速・高品質化し、このような問題は解決した。そこでセンターサーバー方式を採用した「新しいSuica改札システム」を北東北、仙台、新潟、首都圏の各エリアに順次導入しており、2026年度に完了する予定だ。