老後も含めて、末長く仲良い夫婦でいるための秘訣は何か。けんかした時にすぐにすべき対処法は?心療内科医の海原純子氏に、ジャーナリストの笹井恵里子氏が聞いた。(心療内科医・産業医 海原純子、構成/ジャーナリスト 笹井恵里子)

夫婦が仲良く過ごすための
ポイントは「適切な距離感」

心療内科医・産業医の海原純子氏心療内科医・産業医の海原純子氏 撮影:今井一詞

 前回は企業内での人間関係について触れましたが、定年後は夫婦関係に悩む人がいます。私は読売新聞「人生案内」の回答者でもあり、夫の定年後に「3食を作らなければならない」「一緒にいる時間が長い」という妻からの相談が多いと感じます。

 不満をためないためには、もし専業主婦の方でしたら、夫の定年とともに“主婦も定年”だと思って、夫と付き合うこと。夫側も、定年後は「何でもやってもらうのが当たり前」という感覚を捨てることが大切です。

 そして夫婦が仲良く過ごす最大のポイントは、「適切な距離感」です。これは定年後に限らず、いかなるときの夫婦関係であっても、また親子関係でも同じこと。距離感を言い換えると、おのおのの「パーソナルスペース」と「パーソナルタイム」になります。これが必須なのです。

 どんなに好きな人であっても、誰かと一緒にいるだけで、人はある程度のストレスを感じます。会社に行くとなぜ疲れるかというと、他人と机を並べて仕事をするということ自体、ストレスだからです。通勤電車も乗車時間ではなく、他人との距離が近いことがストレスになります。

 反対に旅客機のファーストクラスや、鉄道のグリーン車は価格が高いですが、それは一人当たりの占有面積が広く、パーソナルスペースがあるから。米国では、夜は家族一緒ではなく、別々に寝ることが当たり前ですし、プライバシーというものを重視します。

夫も妻も「自分の時間」を
きっちり持つこと

 ところが日本ではプライバシーよりは効率、またかつての長屋住まいから根付いた習慣もあり、パーソナルスペースとパーソナルタイムの二つ、共になさすぎるのが問題なのです。日々の生活で家族全員が一緒に食事をする、共に行動する、同じ部屋で寝るということが多いでしょう。

 もちろん夫婦、家族ですから一緒にいることも必要です。ですが、その頻度を考えなければなりません。

 簡単にできることとしては、夫も妻も「自分の時間」をきっちり持つこと。特に妻は、自分の時間をすべて家事や育児に使いやすいですが、「夫(家族)立ち入り禁止時間」を作り、お茶を飲みに行く、買い物を楽しむ、お稽古事に邁進するなど“一人で過ごす”時間を持ちましょう。