気持ち新たに新年を迎えるために、今年起こった悲しい出来事やストレスとどう向き合えばいいのか。心療内科医で産業医の海原純子氏にジャーナリストの笹井恵里子氏が、嫌なことや不安な気持ちをサッパリ洗い流す方法について聞いた。(心療内科医・産業医 海原純子、構成/ジャーナリスト 笹井恵里子)
年末、自分の心を見つめ直して
大変だったことを洗い流そう
今年はあなたにとって、どんな一年でしたでしょうか。
悲しい出来事が起きたり、物事がうまくいかない状況に直面してストレスに押しつぶされそうになっている人もいるかもしれません。
でも、困難から立ち直る「回復力」は誰でも身に付けられます。鍵は、自分の内面と関わる時間を持つこと。新年を迎える前に改めて自分の心を見つめ直し、大変だったことを洗い流しましょう。
前回の記事で、何か嫌なことがあった時にはすぐに手軽にできる心が和むことや、リラックスできる「三つのこと」をする「3対1の法則」を伝えました。
散歩や花を飾る、猫を抱いてなでる、コーヒーを飲む、シャンパンを買いに行く、歌を歌う、楽器を演奏するなど、日頃からいい気分になれるものを100個ほどリスト化しておき、ストレスを感じたらその中から三つを選んですぐに実践する。特に体を動かすことや深呼吸など、体を通して回復力をアップすることはお勧めです。
夫婦げんかの場合はお互いが気持ちを回復できるような「五つのこと」をしないと関係性が修復できないとも述べました。嫌なことがあった時、あるいはけんかをした時に自然と「三つのこと」に取り組めるようなスキルが身に付くと、鬱(うつ)にならずにストレスからの回復力が高まります。
表現することは
ストレスを乗り切る上で何より大切
感情をノートに書き出すことも、とてもお勧めです。私自身、何十年も毎日ノートを持ち歩き、その日に起きたことなどを書き留めています。
例えば「頭にきた」ことがあったとします。慣れないうちは、ノートにただ「頭にきた」と一言書いたり、自分の感情を少しずつでも書いてみたりします。自分が書いたものを自分の目で見て、認知する。すると客観的になり、もう少し違うものの見方があるのではないかと、考えられるようになるのです。
「書くこと」は「表現する」こと。表現することはモヤモヤをためこまないということで、ストレスを乗り切る上で何より大切です。ですから「何か出来事があったら書く」というよりは、いつも書く習慣をもち、表現する力を培うことで、いざ、何かつらい時や悲しいことが起きた時も、それをすぐに表現できるようになります。その時点ですでに回復への道を一歩も二歩も進んでいるということなんですよ。
「速足で歩く」と
鬱気分が緩和する
最近はSNSの発達で、発する単語が短い人が多いと感じます。表現するボキャブラリーが少ないと、子どものようにすぐに泣いたり手が出てしまうなどの暴力的な行動につながりやすい。
海外に出かけると、表現したいけれどもささいなことで言葉が出ない、もどかしい経験をしますよね。ものすごくフラストレーションになるでしょう。言葉が通じにくい現地で日本人に出会うと、「日本語が話せてよかった!」とうれしくなります。要するに語学的に表現しきれないものがあると、心の中に鬱憤がたまっていくのです。
表現することは体でもできます。誰でも簡単にできるのは、走ったり歩いたりということ。最近の研究で「速足で歩く」と脳代謝に影響し、鬱気分が緩和するということが報告されました。最初はリラックスして歩いてもいいのですが、できる範囲で姿勢を良くし、速く歩こうという意識で歩くと気分が上がっていくと思います。
「落ち込む」のではなく、「不安」を感じる時はどうすればいいでしょうか。