「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集します。
極端な弱みは強みになる可能性がある
人生で、どんな選択をすれば、リターンが最大化されるのでしょうか?
本書で詳しく述べている通り、競争優位の形成に貢献する資源の条件が「調達困難性」にあるのであるとすれば、私たちは「自分の強みは何か?」という問いについて考えるのを止める必要があります。
そして、「他の人にはない、私のユニークな特徴は何か?」という問いについて考え、そして、その特徴をどうやってキャリアや仕事につなげられるかを考えるべきだ、ということになります。
ひと言でいえば、私たちは「自分で自分のプロデューサーになる」ことが求められるのです。
さらに指摘すれば「その人ならではの特徴」は、往々にして「弱み」に直結しているとも言えるでしょう。
マイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」は、史上もっとも売れたジャズアルバムだと言われていますが、あの抑制の効いたクールな演奏は、当時流行していた、ジョン・コルトレーンやチャーリー・パーカーのように超絶技巧で吹きまくるスタイルができない、言うなれば「マイルスの下手さ」によって生み出されています。マイルスがライバルに嫉妬して「自分の弱点を克服する」と奮起して練習などしていたら、あの傑作アルバムは生まれなかったのです。
これは「プロデュースの基本」とも言えます。プロデュースにおいて重要なのは「欠点を矯正する」ことではなく「ユニークな点を伸ばす」ということです。私たちは往々にして「人の欠点」を見て、それを矯正しようとしてしまいますが、プロデュースにおいて重要なのは「人のユニークな点」を見て、それをどう時代の文脈で意味づけるか、ということなのです。
なぜなら社会で評価されるのは「平均点」ではなく、他人には真似のできないユニークさだからです。そしてこのユニークさは、往々にして本人が考える「欠点」と表裏一体なのです。