自分らしくいられる
よりどころを手放さずに

 ジェンダーギャップは是正されてきてはいますが、それでも現実には存在します。学業では男性と同等に評価されても、女性は出産などのライフイベントによって、仕事にフルコミットできない場合があり得ると想定しておくべきです。

 対処策としては、自らの生産性を会社にアピールしていくことが有効でしょう。年齢の近い層の仲間と連帯し、産休中などにどれくらい働けていたのか、情報を共有することが大切です。時短のときの生産性でフルコミットできた場合、「このくらいの仕事ができます」と訴える。その積み重ねが、道を開くことにつながります。

 振り返ると、子どもの頃から本を読むのが好きでした。それが単なる趣味ではなく、自分にとって本質的なものだと気付けたのは逆境によってでした。「読むこと」によって日常を相対化し、自分を取り戻し、厳しい現実に対峙できたように思います。

 弁護士時代に所内失業状態になっていたとき、閉館時間まで図書館で読書し、想像の中を自由に泳いで、翌朝出勤する気力を取り戻せたことを思い出します。いわば読書によってレジリエンスを養っていたのです。

 皆さんも自分らしくいられるよりどころを手放さずに、ご自身の能力を生かせる職場で活躍されることをお祈りしています。

やまぐち・まゆ/信州大学先鋭領域融合研究群社会基盤研究所特任教授。東京大学法学部3年次に司法試験合格。2006年同学部を総長賞を受け卒業。財務省に入省。08年同省を依願退官し、09年弁護士登録。法律事務所に勤務。15年米ハーバード大学ロースクールに留学。16年同校卒業。17年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に入学。米ニューヨーク州弁護士登録。20年東大大学院を修了。博士(法学)。21年信州大学特任教授に就任し現在に至る。