アメリカでベストセラーとなり、多くの絶賛の声を集めた『Master of Change 変わりつづける人――最新研究が実証する最強の生存戦略』がついに日本に上陸した。著者のブラッド・スタルバーグはマッキンゼー出身で、ウェルビーイング研究の第一人者。この本が指摘するのは、人生を消耗させる「思考の癖」だ。本稿では、本書の内容をベースに、「感情をうまく扱える人」になる方法を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
感情を言語化すると、自分を客観視できる
頭では「落ち着かなきゃ」とわかっていても、怒りや不安の感情に振り回されてしまうことがある。
職場や家庭でつい感情的な態度をとってしまい、しばらくしてから「もっと上手に対処できたはずなのに……」と後悔する。こんな経験に覚えがある人も多いだろう。
このような状況を防ぐための有効策として、スタルバーグは「感情ラベリング」という方法を紹介している。
一瞬、間をおくことは誰にでもできる。だが、感情が高ぶっている時は、感情に飲み込まれて、瞬く間に反応のスパイラルに巻き込まれがちだ。
状況、特に難しい状況をきちんと整理するには時間と距離が必要だ。そのためには自分の感情に名前をつけることをお勧めする。
(P.250-251)
感情に名前をつけることで、今何が起こっているのかを客観視できる。そうすることで、激しい感情に飲み込まれるのを防ぐわけだ。
科学的に実証された「心を整える方法」
この方法は科学的にも効果が実証されている。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究では、被験者を想定外のストレスにさらし、一部の被験者に感情ラベリングを実践するよう指示した。結果は次の通りだ。
自分の感情を意識して名前をつけた被験者は、生理的覚醒(次に何が起きるかを予測して、胸がドキドキするなどの生理現象が起きること)がさほど起きず、扁桃体(感情に関わる脳の領域)もそれほど活性化しなかった。感情ラベリングをした被験者たちは、気が楽だったと報告している。
(P.251)
本書の中でも登場するのだが、神経科学者パンクセップの研究によれば、人はカーっとなっている時に扁桃体が活性化するという。
つまり、感情ラベリングをした人としなかった人では、脳の働きに差が出ると示されたのだ。
感情ラベリングは、具体的に言語化することが重要
ちなみに、感情ラベリングの効果を出すためには、できるだけ具体的に言語化することがポイントのようだ。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者たちは、感情の名前が具体的であればあるほど──たとえば、「さみしい」よりも「恋しい」、「不安」よりも「張り詰めている」など──人々は自分の感情にもその状況にもうまく対応しやすくなることに気づいた。
(P.253)
本書ではラベリングの一例として、「のど元に不安を感じる」「胸がギュっとする」「手のひらに熱を感じる」といった表現を挙げている。
具体的に言語化するのは、難しいと感じる人もいるかもしれない。のどや胸、手のひらなど、身体感覚の変化に注意を払ってみることが、具体的に言語化するコツと言えそうだ。
※本稿は『Master of Change 変わりつづける人』の内容を一部抜粋・編集したものです。